2012 Fiscal Year Annual Research Report
中華人民共和国の対日「民間」外交と日中人的交流に関する実証的研究
Project/Area Number |
23730158
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
王 雪萍 東京大学, 教養学部, 講師 (10439234)
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Keywords | 日中関係 / 中国 / 人の移動 / 留学生 / 華僑 / 外交 / 人材育成 / 日中国交正常化 |
Research Abstract |
本研究は中国政府の档案資料などの一次資料と中国政府の対日業務担当者への聞き取り調査を通じて、学術的に中国の対日外交の展開方式を分析し、また建国直後に形成された外交システムが現在の日中関係への影響についても分析した。 以下の史実を明らかにした。 建国直後の中国は、対日業務担当者に対しては、特別な要求をしたため、人材不足が深刻であった。こうした状況下で、日本留学経験者や、日本からの帰国華僑から、多くの対日業務担当者として起用した。対日関係の改善は、建国後の中国外交の重要な位置を占めていた。冷戦構造下で、政府間交渉が実現できないなか、「民間先行、以民促官」の方針を打ち出したため、中国外交部ではなく、婦女連合会や、総工会、中国国際電台などのいわゆる民間団体(実質的にすべて中国政府や中共に直轄された部門)に、多くの対日業務担当者が配属され、対日業務を様々な面から行った。特に、日本人の考え方を熟知していた帰国留日学生・華僑を起用してことのよって、中国の対日業務の現場では、日本人の心を捕まえ、日本側の期待をできるだけ応えようとする業務方式を取られた。結果として日本の国内世論は中国への親近感を増し続け、日中国交正常化の機運が次第に高まった。文革中にも関わらず、日中国交正常化が実現できたのも、中国対日「民間」外交によって形成された日本の国内世論に大きく影響された結果だと言われている。 以上の中国の対日業務指導方式は、外交上では、異例な業務方式であるが、廖承志の個人的な人脈によって成功した面も強いです。この方式は、日中国交正常化が実現したこともあり、廖承志の死去によって終焉が迎え、政府レベルの対日業務は、基本的に外交部に移管された。また、廖承志日中蜜月関係構築の功労者でもあるが、1983年廖承志の死去によって、日中両国のハイレベルのパイプ役が失われたとも言える。
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