2011 Fiscal Year Research-status Report
国際人道法に基づく戦争責任と戦後補償責任の日本国内での内包化過程
Project/Area Number |
23730175
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Research Institution | International University of Japan |
Principal Investigator |
熊谷 奈緒子 国際大学, 国際関係学研究科, 講師 (10598668)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 戦争責任 / 個人補償 / 国際人道法 / 日本 / 従軍慰安婦従軍慰安婦従軍慰安婦 / 戦争犯罪 |
Research Abstract |
本研究の目的は日本の戦争責任における個人補償の是非に関する議論において、日本国民の間での統一的な見解が戦後65年を経ても形成されていない原因を探る事にある。研究者は国際的規範の国内へ内包化における「解釈の共同体」が適切な機能を果たしていないという仮説を立てた。昨秋(2011年10月)までは、日本の集団戦争責任の受動的受容についての資料収集分析をおこない、「極端な犠牲者観」と「責任論に結びつかない不明瞭な罪悪感」の共存が見られることを確認し、それを論文として発表した。さらにこの「個人補償としての戦争責任」への見解の不一致が「国際人道法の不完全な内包化」として捉えられることを既存の資料とともに最新のデータを基に明らかにした。また戦後責任や戦後個人補償に関わる弁護士や活動家、学者の相互関係を既存の文献から調べることで、「解釈の共同体」が存在することを実証した。ただ、個人補償の問題が南京大虐殺、慰安婦問題、中国人韓国人強制労働問題など多岐にわたるケースを含むものであることから、最終的に従軍慰安婦問題に関わる「解釈の共同体」に研究対象を絞ることにした。この決定は本来の研究目的を損ねるものではなく、逆に研究分析を精緻化するものである。2012年3月には慰安婦問題の調査のため、韓国にある日本軍「慰安婦」歴史館を訪れ、犠牲者の経験した慰安婦制度の実態について、また個人補償を目指した韓国側と日本側の活動家の協力体制についてなどをインタビューを通じて把握した。 さらに研究者は「解釈の共同体」の機能を説明するものとして、「オントロジカルセキュリティー」という概念を新たに学んでいる。この概念は「解釈の共同体」の精緻な分析のために非常に重要な概念となると考えている。今年度後半に行われる「解釈の共同体」のメンバーへのインタビューでは「オントロジカルセキュリティー」に関する質問を新たに含むことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「解釈の共同体」に実態について、誰がどのように関わっているかを明らかにすることにかなり時間がかかった。戦争責任における個人補償の問題そのものが、慰安婦問題、中国、韓国人強制労働問題、731部隊問題など多岐にわたり、それらのイシューごとに存在する「解釈の共同体」の参加者が込み入った形で重り、非常に複雑化した研究対象の処理の仕方に多少手間取った。最終的には当該論文では「慰安婦問題の解釈の共同体」を中心に絞ることにした。さらに「解釈の共同体」の機能に関する新しい概念である「オントロジカルセキュリティ」に関する資料収集、そしてその読み込みに多少時間がかかってしまっている。ただこの回り道は最終的には精緻な研究を可能にするものとなることになったと確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度後半は「解釈共同体」に関わっている「解釈主体」(学者、活動家、弁護士、官僚など)へのインタビューを行い「解釈共同体」の機能について、とくに彼ら、彼女らの持つ「オントロジカルセキュリティー」が「解釈共同体」としての活動にどのように影響しているのかを明らかにする。さらに「解釈共同体」と一般国民との距離が個人賠償についての統一見解を阻んでいる可能性についても調べるために、日本国民一般が持つ「個人補償としての戦争責任」への考えを、世論調査によって明らかにする。そのことによって本研究の最終目的である、個人補償について統一的見解が生じていない諸要因とそれらの相対的比重を実証的に明らかにする。またそのインタビューや世論調査と平行して理論の章を仕上げる。平成24年一月以降はインタビュー結果と併せて、実証研究の章を書き上げる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は主に以下の4つの分野に費やされる。1.インタビュー調査旅行。2.世論調査の費用。3.学会への出席。4.必要に応じた書籍や文房具の購入。予算配分としては以下のとおりである。1.インタビュー:40%。2.世論調査:30%。3.学会出席:20%。4.書籍文具購入:10%。世論調査については、当初学生のアルバイトを雇う予定ではあったが、時間的事務的制約のために世論調査の会社へ以来することも検討中である。勿論いずれのケースとなってもサンプルバイアスを生じないように気をつける。
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Research Products
(2 results)