2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730177
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
楠 綾子 関西学院大学, 国際学部, 准教授 (60531960)
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Keywords | 同盟 / 外交史 / 安全保障 / 国際研究者交流 / 多国籍 |
Research Abstract |
今年度は夏休み(8月)に約2週間、春休み(2~3月)に10日間、アメリカで資料調査を実施した。アメリカ国立公文書館、ハーバード大学図書館、アイゼンハワー、ケネディ、ニクソンの各大統領図書館の所蔵する文書が調査、収集の対象となった。 前年度までにある程度調査していた、国務省や軍部の政策形成過程の文書や外交交渉記録に加えて、各大統領図書館での調査によってホワイトハウスを中心とする政策決定過程をたどることができるようになったのはひとつの成果である。とくに、アメリカの対日政策に関わる政治・外交サークルの存在とその影響力、対日政策がアメリカの対外政策のなかでどのような位置づけにあったのかを理解することが可能となった。 在日米軍基地に関する文書については、前年度に引き続きさまざまな部局やレベルの記録を調査、収集した。今年度は台湾海峡危機(1954年、1958年)や朝鮮半島情勢、アメリカの海外基地政策に関する文書に調査の範囲を広げた。在日米軍基地の地域における役割を検討するうえで有用だと期待される。 資料収集の成果の一部は、8月に京都大学の「『20世紀と日本』研究会」において発表した(「1950年代の日米安全保障関係」)。講和・安保条約が成立した直後の1950年代、米軍基地をめぐってどのような問題が発生したのか、日米両国がそれらをどのように処理していたのかを検討したものである。現場レベルの日常的な調整を通じて基地の運用に関する慣行やルールが形成されるとともに、旧安保条約の問題点に関する認識が両国で共有され、それらが安保改定へと流れ込んでいったことを示唆している。この報告については、史料を充実させたうえで来年度中に論文をまとめるつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基地を運用する当事者は米軍部であるが、軍関係の史料は他の文書に較べてアクセスが難しい。また公開されているものも、断片的であったり、テクニカルな内容で慣れるまでに時間がかかることが多い。そのため、軍関係の史料の調査、収集はなかなか進んでいない。さらに、収集した文書の分析がやや遅れがちなことも、今年度の課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、アメリカで軍部関係の史料を中心に未調査の史料を収集するとともに、日本国内では主として防衛省・自衛隊や地方自治体の保有する基地関連史料を調査・収集する。これに並行して、2年間の史料調査の成果を論文の形で発表する。米軍基地の運用をめぐる日米交渉、1950年代半ばの外務省の安保改定構想、1950年代後半の安保改定、の大きく3つについてまとめることを考えている。最終的には、講和以後の1950年代に、日米が基地の利用や運用に関してどのように合意を形成していったのかを明らかにし、日米同盟における共同防衛の意味を考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2011年度から2012年度の2年間で、本研究に関する国務省や軍関係の史料を調査・収集することを計画していたが、予想以上に量が膨大で、また調査の過程で分析対象の史料の範囲も広がった。さらに、上述のように軍関係の史料の調査・収集がなかなか進まなかった。2013年2月から3月にかけて集中的に調査を実施する予定であったが、時間が足りず、調査費として予定していた研究費に残金が出ることになった。 次年度は、アメリカで軍関係の史料および米軍基地に関する日本国内の史料の調査・収集を行う。今年度の未使用額はその一部に充てることとしたい。
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