2011 Fiscal Year Research-status Report
協力維持のための制度研究:絶対的・相対的な罰則基準の比較
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23730195
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
竹内 あい 早稲田大学, 政治経済学術院, 助手 (10453979)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 実験経済学 / ゲーム理論 / 公共財 / 罰則 |
Research Abstract |
社会的ジレンマにおいてどのような制度を導入すれば、人々はより協力するだろうか。本研究では様々な制度の中で特に罰則制度に着目し、その中でも罰を適用する際の基準が絶対的(協力しなかった人は全員罰される)な罰則制度と相対的 (協力をしなかった人の中で一番協力しなかった人が罰される)な罰則制度をゲーム理論と実験的手法を用いて比較する。先行研究では主に絶対的な基準の罰則制度が研究されているが、相対的な基準で制度が運営されている場合は多々存在する。では、どちらの方がより人々の行動を律するのに効果的なのだろうか。 ここでは特に社会的ジレンマとして自発的公共財供給ゲームを用いた。理論的には、相対的な基準のナッシュ均衡の方が絶対的な基準の均衡よりも、高いか等しい平均協力率をもたらすということが解った。特に、罰則金額に対して要求する協力の基準値(罰されない最小の協力率)が高すぎると、相対的な罰則制度の方が絶対的な罰則制度よりも高い平均協力率をもたらすことが解った。 次に、この理論モデルをもとに実験を実施した。理論的に相対的基準と絶対的基準の均衡で等しい協力率が得られる設定のもとでは、実験室の結果でも両制度のもとで観察された協力率に差があるとはいえなかった。また、相対的基準の均衡の方がより高い平均協力率をもたらす設定のもとでは、相対的基準でより高い協力率が観察された。まとめると、理論の結果と実験結果の双方からみても、相対的基準の罰則制度の方が絶対的基準の罰則制度よりも高いか等しい協力率を達成することが解った。この理論と実験の結果は、Kamijo, Nihonsugi, Takeuchi, and Funaki (2011) にまとめられている。 一方で、実験では理論からの乖離も観察されたため、この乖離をより詳しく分析するために追加実験を行った。2012年度はこの結果をより深く検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主要な目的は、(1)より効率的な結果をもたらす制度を理論的にまた実験を用いて分析する、(2)どちらの制度が効率的な結果をより維持可能かを検討する、の二点である。2011年度中に当初予定していた(1)と(2)のそれぞれについて理論的な分析と実験の分析を行うことができた。 (1)の結果については国際学会(PET 11)で報告を行い、論文の執筆も終え、現在査読付きの国際ジャーナルに投稿中である。また、(2)の結果についても当初よりも早く分析を終えることができたため国際学会(ESA Asia-Pacific Meeting)で報告した。 このように、結果も得られ成果報告も行えているので、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は主に2011年度に得られた研究結果の学会報告と論文の執筆を行う。相対的基準の罰則制度と絶対的基準の罰則制度を実験室で比較した際、均衡における協力率が等しい場合には両者の間に差はなく、相対的基準の方が高い場合は相対的基準の協力率が高くなる傾向が観察された。この意味で、理論の予測と実験の結果は一致した。しかし、理論からの乖離も観察された。特に、均衡での協力率が一番高くなるはずの設定において、繰り返しとともに均衡から逸脱する行動が多数観察された。この乖離をより詳しく検証するために、2011年度に追加で実験を行った。2012年度はこの実験の結果についてより詳細な検証を行い、結果を学会で報告し論文を執筆する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の通り研究を推進するために、2012年度の研究費は以下のように使用する計画である。まず、繰り返しとともに変化する行動を検証したいため、進化ゲームや学習に関する研究への理解を深めたい。そのためこれらの分野に関する図書を購入する。次に、実験経済学の国際学会ESA Asia-Pacific Meetingが本年度は東京で行われる予定なので、これに参加し学会報告をする。最後に、論文は英語で執筆するため、論文の質をより向上させるため英文校正にかける。
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Research Products
(2 results)