2011 Fiscal Year Research-status Report
長期記憶時系列における統計的推測理論の構築とその経済データへの応用
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23730209
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
生川 雅紀 東北大学, 経済学研究科(研究院), 博士研究員 (30588489)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 長期記憶 / セミパラメトリック推定 / Broadband / 確率的ボラティリティ / 実数差分過程 / 季節変動時系列 |
Research Abstract |
平成23年度は,長期記憶性を持つ時系列データにおけるセミパラメトリックな統計的推測理論構築の中で,主に,長期記憶時系列に観測誤差が付随しているモデルや季節変動を含むモデルのへの拡張に取り組んだ。本年度実施した研究によって得られた成果の概要は以下の三つである。 まず,一つ目の研究成果として,ボラティリティモデリングで広く用いられているLong-Memory SV (LMSV)モデルへの応用を念頭に置いた,観測誤差付きモデルにおける長期記憶パラメータのセミパラメトリックな推定法を提案し,推定量の一致性を確立するとともに,複雑な挙動を示すデータ生成過程に対しても良好な推定量が得られることを数値実験から示した。また,LMSVモデルの枠組みで主要国の為替レートデータを用いた分析を行い,実際の為替レート時系列において,そのボラティリティに強い長期記憶性があることを明らかにした。次に,季節変動性を含む長期記憶時系列への拡張として,これまでのBroadband推定法にGegenbauerプロセスを組み込むことによって,長期記憶時系列のスペクトル密度における極が原点からずれた,周期的な長期記憶性を有する時系列への対応が可能となり,より漸近的に効率的な推定法となりうることを数値実験により見出した。しかしながら,一致性・漸近正規性の理論的性質が確立できておらず,これらの理論的整備は翌年度の課題としたいと考えている。最後の成果として,これまでに構築してきたセミパラメトリック推定法を応用することによって,対象としている時系列が長期記憶性を持つか,あるいは,より一般的にどのような実数差分過程に従うかをセミパラメトリックに検定できる統計量を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多様な特性を有する長期記憶時系列に対おけるセミパラメトリックな統計的推測理論の構築が本研究の目的であるが,本年度においては,まず,観測誤差付きモデルに対する推定法を確立し専門誌にて公表することができ,さらに,季節変動長期記憶時系列への拡張についても理論的整備を含め,ある程度の方向性は固まって来ている。しかしながら,今年度の研究計画に盛り込んだ課題がやや多く,また,計画には含まれていなかった関連する検定統計量の提案を行ったこともあり,非定常性を有する時系列に取り組めなかった。全体としては一定の成果が出ているものの,当初の予定からは少し遅れていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
長期記憶時系列のセミパラメトリックな統計的推測理論を季節変動と非定常の二方向へ拡張することに注力し,まずは基礎理論の構築を目指す。とくに,大方の目処のついている季節変動長期記憶時系列に対する理論的な性質を導出し推定法を確立するとともに,非定常長期記憶の枠組み構築に取り組む。加えて,実際のマクロ経済・ファイナンスデータへと応用した分析を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は当初予定していた統計ソフトの購入を見送ったために生じた経費であり,次年度以降に実施する研究における数値計算に必要な経費として,平成24年度請求額とあわせて使用する予定である。
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