2012 Fiscal Year Research-status Report
長期記憶時系列における統計的推測理論の構築とその経済データへの応用
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23730209
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
生川 雅紀 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (30588489)
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Keywords | 長期記憶 / セミパラメトリック推定 / 季節変動 / パネルデータ |
Research Abstract |
今年度は長期記憶時系列のセミパラメトリックな統計的推測理論を季節変動性やパネルデータへと拡張・応用することに主に取り組んだ。その成果は以下の3点である。まず,長期記憶時系列の季節変動性を描写できるGegenbauerプロセスをBroadband推定法に組み込むことによって得られる推定量が一致性を有し,併せて,複数の季節変動性を持つ,極が複数ある場合にもその個数と場所が既知であれば適用できることも示し,より一般的な季節変動にまで対応した推定法へと拡張した。次に,セミパラメトリック推定に特有のモデル選択問題に対処する方法として,スペクトル密度推定におけるブートストラップ法の援用から,ブートストラップ情報量基準EICをBroadband推定法の枠組みで用いる方法を考案し,とくに,季節変動長期記憶時系列に対しては,数値実験からいくつかのケースで適切なモデルを選択する割合が優れていることが分かった。最後に,多変量長期記憶時系列に対するセミパラメトリック推定法をパネルデータ分析へと応用することを検討した。パネルデータの場合,データの次元規模が大きくなりやすいので,パラメータ数を節約することのできる多変量局所Whittle法に基づき,原点近傍で定数行列となる多変量スペクトル密度関数を次元数と同等数のパラメータとなるようモデル化することを考案し,比較的に次元が大きい場合でも計算が可能となり,パフォーマンスも良好であることが数値実験から分かった。理論的な側面の解明は今後の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度においては,まず,季節変動長期記憶時系列に対するセミパラメトリック推定法についてすべてではないが理論的整備とその拡張にある程度の目処がつき,また,モデル選択法としてブートストラップ法に基づく方法を提案した。それと並行して,予定とはやや異なる,他のアプローチの観点から多変量長期記憶時系列に対するセミパラメトリック推定法をパネルデータへと応用することも行っている。多様な長期記憶時系列のセミパラメトリックな統計的推測という観点からはいくつかの課題に同時に取り組むことができたが,非定常性の議論や実データを扱った分析には取り掛かれなかったこと,成果をまとめ切れていないことから,全体としてはやや遅れていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,季節変動長期記憶時系列におけるセミパラメトリック推定法やブートストラップ法を用いた最適モデル選択についての研究成果を取りまとめて研究論文として発表することを行い,さらに実際のマクロ経済データやファイナンスデータなどを使って,提案した推定法による分析を試み,新たな知見を引き出すことを目指す。次に非定常・多変量への拡張とパネルデータの応用についてのセミパラメトリックな統計的推測に取り組む。とくに,非定常かつ多変量な長期記憶時系列に対する方法論について理論的性質を導出することを目指し,その後パネルデータのような次元の規模が大きい場合にも対応できるよう拡張することを試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の残額は誤差として生じた程度であり,次年度の研究費はほぼ当初の計画通りに使用することを予定している。
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