2014 Fiscal Year Annual Research Report
アジアにおける靴産業の再編とバリューチェーン:インフォーマル経済に注目して
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23730227
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
遠藤 環 埼玉大学, 経済学部, 准教授 (30452288)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | バリューチェーン / インフォーマル経済 / 靴産業 / 東南アジア / グローバリゼーション / タイ |
Outline of Annual Research Achievements |
2013-4年にかけて、国際競争が激化する一方で、最低賃金の全国レベルでの上昇などの諸政策が実施され、タイにおける靴産業の大きな再編が進んだ。平成26年度は、第1に、資本類型別に企業の生存戦略に関して追跡調査を実施した。企業の対応は、「移転」「再編」「廃業」のいずれかである。大手資本は、主に生産工程の向上(production upgrading)と、オリジナルブランド開発などの機能の向上(functional upgrading)を進めつつも、一方で安価な労働コストを追求する戦略も維持しており、2015年のAEC設立を見据えて近隣諸国に生産拠点の移転を試みていた。輸出国として競合しているのは中国やベトナムである。一方で、近隣アジア諸国や中東市場向けの低級品を生産している一部の中小企業も、コスト上昇や競合国の増大により苦戦を強いられていた。継続調査を行っている中規模企業は、カンボジアとの国境地帯に移転させていた工場も軌道に乗らず、事業自体の縮小と他業種への参入を開始している。 第2に、企業の雇用実態、労働者の状況に対する調査を行った。中小企業は以前から移民労働者(ミャンマー、ラオス、カンボジア人)を雇用していたが、大きな変化は2013-4年を境に大手資本が移民労働者の雇用を始めた点にある。例えば、2013年後半からミャンマー人を雇い始めたB社は、たった1年足らずで約50%のラインワーカ―(約1000人)が移民労働者に入れ替わった。資本規模に関わらず、どの企業も深刻な労働力不足に直面しており、対応戦略の近接化をもたらしていることが明らかになった。 なお、タイにおける追跡調査を予定よりも増やすことになったため、予算制約により中国での現地調査は見送らざるを得なかった。2015年度には成果報告、また中国の実態に関する調査を継続し、2014年度までの研究成果と統合したい。
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