2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730258
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
坂田 裕輔 近畿大学, 経済学部, 教授 (50315389)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | コモンズ / 公共財の私的供給 / アンケート調査 |
Research Abstract |
今年度は、既存資料の収集および、ヒアリング調査を行った。ヒアリング調査は、宮崎県諸塚村において林業の現状について実態調査を行った他、東京都では国立情報学研究所の岡田教授に林業における電子マネーの活用事例について話をうかがった。諸塚調査では、林業の副産物である二酸化炭素吸収機能を活用した取り組みについて調査を行った。諸塚のカーボンオフセットの取り組みは、私有林ではなく公有林を対象としているいる。私有林の場合、長期的に森林が保全される担保がないため、カーボンオフセットの対象としにくいということである。森林の保全を林業目的の森林にゆだねることは、カーボンオフセットだけではなく、他の多面的価値の供給にも影響を与える可能性が分かった。この調査から、今後は、私有林の長期的な保全と林業の収益性の推移に着目して調査・研究を行うこととした。文献調査では、主にコモンズと森林保護関係の文献を収集した。コモンズ研究は経済理論的な観点からの研究はほとんどなされておらず、人類学や社会学的な観点からの研究、および地域社会におけるコモンズの重要性に関する調査・考察が中心であった。また、森林保護に関しては、近年では、REDD+(森林の減少防止による二酸化炭素吸収に、森林管理による増加を加えた概念)等が注目されており、そのなかで、森林を木材ではなく薪や食料といったリ林産副産物利用の観点から利用してきた周辺住民の役割が注目されている。日本では、林産副産物の利用は、近年では椎茸栽培程度しか利用されておらず、必要性が失われつつある。以上、今年度の研究から林業の収益が悪化し、担い手確保が難しくなる中で、今後どのような担い手が森林の管理を行うべきなのか、特に私有林をめぐる状況に着目する必要があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していたヒアリングが進まず、林業従事者に対するアンケートを行うことができなかった。全体にエフォートの見込みが甘く、じゅうぶんな時間をかけることができなかった。本来、研究補助者を雇用し、ヒアリング調査の支援を得る予定であったが、想定していた補助者が就職で研究の補助を依頼することができなくなった。その他の補助者を見つけることができず、ヒアリング調査の計画が送れることとなった。ヒアリング調査の遅れにより、当初予定していたアンケートについても、ヒアリングから得られた課題を中心に質問項目を作成する予定であったため、アンケート項目を作成することができず、全体の研究が遅れる結果となった。もう一件、共同研究者として申請していた科学研究費(基盤B)の計画が同時に採択されたことも一因である。この点、近年、大学の一般業務の負担が増しており、学期中に現地調査を行うことが困難になりつつある。また、夏休み期間も短縮されている。そのため、複数の研究費の採択にともない、必要とされるだけの現地調査を実施することが難しかった。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、私有林の管理を行う関係者(主に森林組合に勤務して、森林を管理している者)にたいして、労働における動機付け等をアンケート調査を実施する予定である。アンケート調査は23年度に予定していたものであり、24年度夏の実施をめざして調査項目を策定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究補助者を雇用し、研究の支援を得る予定である。研究補助者は、昨年度から一名を予定していたが、研究の進捗を進めるために、2名程度雇用することを検討している。また、昨年度予定していたアンケート調査を実施する。
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