2011 Fiscal Year Research-status Report
ウズベキスタンにおけるコミュニティ社会の変容-ネットワークの動態分析
Project/Area Number |
23730267
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
樋渡 雅人 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (50547172)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | 開発政策 / コミュニティ開発 / 社会ネットワーク / ウズベキスタン |
Research Abstract |
本研究の目的は,ウズベキスタンの農村地域のコミュニティ(マハッラ)を対象に,独自調査によって収集した時系列のネットワーク・データを用いて,コミュニティに内在する社会ネットワーク(互助関係,血縁関係,その他の社会関係)の構造と,その変化の動態を捉えることである.本年度は,9月に,ウズベキスタン・アンディジャン州オルティンクル市のオフトバチェク・マハッラにおいて現地調査を実施するとともに,並行して,既収集データを用いた分析を行ってきた. 現地調査においては,今年は,現地協力者の事情等により,マハッラ全体を対象とした大規模な家計調査は実施できなかったが,今後の分析の背景的情報を整理するための質的調査を行うことができた.とくに,マハッラ内における相互扶助や近年の生活環境の変容に主眼をおいたインタビュー調査を行った.マハッラ内における共有施設(ポンプ等)の整備の際には主に近隣住民による10~20世帯程度の小規模なネットワークが動員されることや,ロシア等への出稼ぎ移民の際には,親族ネットワークや地方住民のネットワークが活用されていること等を見出した.また,タシケント市においては,民間の研究所を訪問し,統計データの収集等を行った. 既収集データを用いて,調査地における私的資源移転のネットワーク構造の分析を行ってきた.とくに,ネットワークの統計学モデル化(statistical modeling)の試みとして,一時点のネットワーク・家計データを用いたExponential Random Graph Models(ERGMs)のMCMC推計を試みた.しかし,500世帯程度の大規模なデータを用いた分析になると,パラメータの値が収束し難いという問題が生じたため,より妥当な推計モデルや推計手法を検討することが今後の課題となっている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の実施過程においては,(1)現地調査を通じた家計調査データ及びネットワーク・データの収集と,(2)収集したデータを用いた統計学的モデルの構築と推測統計学的分析,が二つ柱となる.(1)については,今年度は,現地協力者の事情等により,マハッラ全体を対象とした大規模な家計・ネットワーク・データの収集を実施できなかったものの,質的調査を行うことで,背景情報を整理し,分析視角を明確にすることができた.また,定量データの収集についても,来年度以降に実施できれば,既収集データと併せて,当初の予定通り,ネットワークのパネルデータを用いた分析を行うことは十分に可能である.(2)については,既収集データの入力作業を完了し,分析を進めることができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も,当初の予定通り,現地調査に基づくデータ収集と入力,統計学的分析を継続する.家計調査・ネットワーク・データについては,できる限り毎年実施することで,十分な時系列データを蓄積することを目指したい. 今年度に試みた分析を通して,一時点の横断面データを用いた分析においては,大規模な標本にExponential Random Graph Models(ERGMs)を適用したMCMC推計を行うと,パラメータの値が収束し難くなるという問題が生じ得ることがわかった.対処法としては,標本を村内の小地区ごとに分割し,比較的に小標本のサイズによる分析を行うことや,推計モデルを再検討すること等が考えられる.また,今後は,地理空間データを扱った他の統計的分析の手法の適用可能性も検討したい. さらに,新たな現地調査を通して,パネルデータの収集が実現した際には,Actor-Oriented Modelを用いた分析を実施し,ネットワークの変化のプロセスにより焦点をおいた分析を試みる予定である.コミュニティの変容過程において,諸個人の資質や特性(所得、年齢、教育等)のみならず,社会関係の「構造」の差異が決定因としてどのような効果を与えるのかを分析することによって,コミュニティの進化のプロセスや内部構造の理解に新たな知見を加えることができるだろう.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,9月あるいは10月に,ウズベキスタンにおける現地調査を実施する予定である.調査地は,アンディジャン州オルティンクル市に所在するマハッラを予定している.インタビュー調査に加えて,家計調査・ネットワーク調査を遂行したい.旅費は,主にこの現地調査のために用いる.新たなデータが得られた際には,年度後半には,データの入力作業を集中的に行いたい.また,一年を通して,既収集データを用いた統計学的分析や新データの入力作業を継続する.23年度未使用額(2650円)は,予定していた書籍の購入ができなかったために発生したが,この分は,次年度の書籍購入に充てる予定である.
|
Research Products
(1 results)