2012 Fiscal Year Research-status Report
若年世代の所得格差が存在する下での老年世代への年金給付の分析
Project/Area Number |
23730283
|
Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
安岡 匡也 北九州市立大学, 経済学部, 准教授 (90437434)
|
Keywords | 少子高齢社会 / 育児支援政策 / 年金 |
Research Abstract |
平成24年度においては老年世代に対する年金給付を行うためにどのような育児支援政策が望ましいのかについてと公債発行を考慮した育児支援政策のあり方について考察を行った。 具体的には、若年世代が老年世代に対して年金給付を行う際に、少子高齢化が進めば、老年世代1人当たりに対して十分な年金給付ができなくなる恐れがある。その場合、年金保険料を引き上げることによって年金給付を高めることが可能であるが、育児支援政策によっても年金給付を増やすことが可能であることを示した。老年世代に対する年金給付を引き上げる方法としては、合計特殊出生率の引き上げや人的資本の蓄積による1人当たり所得の引き上げを行うための児童手当や教育補助政策が挙げられる。これらの政策によって年金給付水準を長期的に一定水準に留めることが可能かどうかを明らかにした。 また、公債発行を前提とした政府予算の下では、少子高齢化が進んで、年金保険料収入が低下したとしても、公債発行が可能であれば年金給付水準を一定に留めることが可能である。しかし、公債発行残高についてはある一定の水準以下に留めなければならないことが近年の財政改革で主張されていることであり、公債発行残高を一定以下に留めた場合で年金給付水準を保たなくてはならない。公債発行による児童手当は将来世代人口の増加を通じて保険料収入を増やすが、児童手当の財源調達のための公債発行を相殺するに至らず、そのような政策は公債発行を長期的に減らす政策として望ましくないことも明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に行うべきであった研究は、育児支援政策が年金給付の持続可能性をもたらすことができるかどうかと公債発行を前提とした育児支援政策についてであり、いずれも考察を行うことができた。元々、これらの研究成果を元にして、若年世代に所得格差が存在する場合についての育児支援政策や公債発行を考慮した政策を行うつもりであった。 これらについて研究することが本研究テーマにおける最終目的であり、25年度においてこれらの研究を行うことによって、所定の期間内に研究成果を出すことが可能であると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は、若年世代の所得格差を考慮した年金給付水準を維持するための育児支援政策や社会保障政策のあり方について考察を行う。 具体的には若年世代の世帯間での所得格差が年金給付にどのような影響を与えるのか踏まえた上で、所得格差を考慮した上での児童手当や教育補助が年金給付にどのような影響を与えるか、また、そのような政策によって、若年世代の世帯間の所得格差にもどのような影響を与えるかについても同時に考察する。また、育児支援政策の他にも労働参加率を引き上げる政策(保育所の整備や介護施設の充実など)を行うことによって年金給付に必要な保険料収入を確保することができるが、どのような政策が労働参加率を引き上げる上で有効であるかを考察する。加えて、育児支援政策も含めた若年世代に対する社会保障給付が老年世代に対する年金給付にどのような影響を与えるのかを考察した上で、最適な世代間の社会保障給付の配分について考察する。 さらに、これらの政策を公債発行を考慮した政府予算を考えた場合に、公債発行残高にどのような影響を与えるのかも考察し、今後の日本の持続可能な社会保障制度のあり方について提言を行いたい。 来年度は最終年度であるため、3年間の研究成果を国内外での学会報告や雑誌への投稿という形でできるだけ多く研究発表をしていく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内外での学会報告のためには旅費などが必要であり、また英文雑誌に投稿する場合は、査読料、掲載料、英文校閲料などの費用が必要である。3年間の研究成果をできるだけ多く発表するために、積極的に国内外の学会報告や雑誌投稿を行っていくつもりであるので、そのための費用として使用する計画である。 また、同分野の経済学者などとのディスカッションを通じてそれを研究論文に生かせることが多いため、研究会を開催することも予定している。
|
Research Products
(16 results)