2011 Fiscal Year Research-status Report
銀行間ネットワークと預金取り付けの伝染効果:戦前期日本の実証分析
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23730309
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
澤田 充 日本大学, 経済学部, 准教授 (10410672)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 預金取り付け / ネットワーク / 銀行 |
Research Abstract |
ある銀行の預金取り付けや破綻が別の銀行の預金取り付け(引き出し)を誘発する現象を預金取り付け(引き出し)の伝染効果と呼ぶ。本研究は、預金保険が整備されておらず、度々大規模な預金取り付けに見舞われた戦前期日本のデータを用いて、預金取り付けの伝染効果の進展過程について詳細な実証分析を行うものである。具体的には、預金取り付けが他の銀行へ伝播して行くチャネルとして銀行間の系列関係を示すネットワークに着目し、昭和金融恐慌期(1927年)および昭和恐慌期(1930-1931年)において発生した大規模な預金取り付けを対象に実証的な観点から分析を行うものである。 今年度については、データベースの作成とデータの整理を行なった。データベースの作成については、銀行財務データおよび破綻銀行データを作成した。前者については1926年から1931年について『大蔵省銀行局年報』よりデータベースの作成を行なった。後者に関しては、昭和金融恐慌期(1927年)における休業銀行の情報については、日本銀行金融史資料第9巻の銀行事項月報より、また、昭和恐慌期(1930-1931年)における休業銀行の情報については、進藤寛(1987)「昭和金融恐慌における休業銀行・開店休業銀行の実態と影響」『地方金融史研究(第18号)』に掲載されている 表8より作成を行なった。また、銀行間のネットワークデータが計量分析に必要になるので、岡崎・澤田(2008)で用いた役員兼任データを基にネットワークデータの作成を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度については、データベースの完成を目標としていた。銀行財務データ、破綻銀行データおよび銀行間ネットワークデータについては、ほぼ完成しており、データの整理に少し時間がかかるものの、当初の目標については、概ね達成できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度については、前年度に作成されたデータベースをもとに分析作業に入る。分析については、ミクロデータに関する計量手法を適宜用いて分析を行う。データの解析に関しては、Stataなどの統計ソフトを用いる。また、ネットワーク統計量を分析する際には、Pajekなどのネットワーク解析ソフトを用いる予定である。 具体的な分析については、各銀行がどの銀行とネットワークを保有しているかについて識別ができるので、それぞれの銀行のネットワーク先の銀行の預金変化率を求めることができる。これを用いて、当該銀行の預金変化率に影響を及ぼすかについて推計を行う。また、破綻銀行とのネットワークが当該銀行の預金変化率に負の影響を及ぼしているかについて検証を行った上で、いくつかの追加的な分析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究費については、データベースの作成を研究代表者自身で遂行したため、研究補助員費用を節約することができた。その分を次年度のデータ整理ための研究補助員の費用ならびに研究発表のための旅費に充当する予定である。したがって、次年度の研究費については、データの整理のための研究補助員費用に30万円程度、研究成果の報告のための旅費に25万円程度、データ解析に用いる統計ソフトなどに20万円程度、その他の経費に15万円程度割り当てる予定である。
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