2011 Fiscal Year Research-status Report
両大戦間期イングランド銀行の対外政策に関する研究‐エル・サルバドル準備銀行の創設
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23730334
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Research Institution | Hachinohe National College of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 純 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30413719)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | イギリス / オーストラリア / ニュージーランド |
Research Abstract |
主にイングランド銀行文書館(Bank of England Archives)所蔵の資料の読解・検討によって、研究成果を5件の学会・研究会で発表することができた。具体的には、(1)社会経済史学会全国大会(於:立教大学、2011年5月)、(2)ラテン・アメリカ政経学会全国大会(於:京都外国語大学、2011年11月)。(3)イギリス帝国・コモンウェルス研究会(於:東北学院大学、2012年1月)、(4)Asia-Pacific Economic and Business History Conference(於:Australian National University、2012年2月)(5)ラテン・アメリカ政経学会関東部会(於:ジェトロ・アジア経済研究所、2012年3月)、以上である。 (1)の発表におけるコメントを踏まえ、論文「英国金融使節団と1930年代大不況下のラテン・アメリカ‐エル・サルバドルにおけるパウエル使節団の活動‐」『西洋史研究』2011年11月(査読あり)を発表した。また、(2)-(4)の発表におけるコメントを踏まえ、"The Bank of England Financial Advisory Missions to Latin America during the Great Depression: From the Perspective of the Periphery", Australian National University, Canberra, 16 February, 2012, を作成した。この論文は、同学会のホームページ上に掲載されているが、これを再検討・修正した後に、英語の学術雑誌に投稿する予定である。 また、(5)における発表を踏まえ論文をほぼ作成し終えており、政治経済学・経済史学会の機関紙である『歴史と経済』(査読あり)に近日中に投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、イングランド銀行がスターリング圏の維持・拡大を目的として帝国内外の諸国に派遣したアドバイザーの活動を、エル・サルバドルの事例研究を中心にみていくことであった。特に、同行アドバイザーが推進した中央銀行創設のプロセスや、果たして中央銀行の創設によってスターリング圏の維持・拡大という目的は達成されたのか否か、以上の点を明らかにすることに重点を置いた。具体的には、イングランド銀行所蔵の史料を用いてアドバイザーの活動を追跡していく中で、(1)エル・サルバドル中央準備銀行創設のプロセスと、(2)それによってエル・サルバドルはスターリング圏に包摂されたのか否か、以上の点について明らかにすることであった。 本年度を振り返ると、以上の2点を本年度中にかなりの程度明らかにすることができた。そしてその結果は、各種学会・研究会における5回の発表を経た上で、2本の論文(うち一本は査読論文)発表によって発表することができた。特に、『西洋史研究会』に発表した論文においては、エル・サルバドルにおけるパウエル使節団の活動の全体像をほぼ明らかにすることができたと考える。 さらに、エル・サルバドルの事例研究と、アルゼンチンの事例研究を比較検討し、1930年代イングランド銀行の対外政策の全体像を展望することもある程度可能となった。この結果は、近日中に、査読雑誌である『歴史と経済』(政治経済学・経済史研究会機関紙)に投稿予定である。 当初の予定は、学会発表を2回行い、論文を1本の作成が目的であった。しかし、上述のように、学会発表5回、論文2本発表という成果を挙げることができた。また、本年度は、エル・サルバドルの事例研究を、アルゼンチンとの比較において相対化する作業までは予定していなかったが、この作業は既に論文の作成まで終えている状況にある。以上の状況から、現在、計画以上に研究は進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進計画は以下の通りである。 (1)未だ十分に明らかにしていないイングランド銀行アドバイザーのエル・サルバドルにおける活動を、入手済みの一次資料のさらなる読解によって明らかにしていく。具体的には、イングランド銀行や英国大蔵省におけるエル・サルバドル政府に対するアドバイスを巡る議論についてみてくことが課題となる。また、再度の渡英による資料検索・収集を行うことによって、新資料の発掘を試みる。 (2)エル・サルバドルの事例と、これまで研究を行ってきたアルゼンチンの事例研究を比較検討する。さらに、ブラジルにおけるニーマイヤー使節団の活動に関する研究にも着手し、イングランド銀行金融使節団のラテン・アメリカにおける活動の全体像を各国の事例研究を比較検討することによって明らかにしていく予定である。 (3)本研究と、これまで若手研究の助成を受けて行ってきたイングランド銀行の対外活動に関する研究を著書『英国金融使節団と1930年代債務危機下のラテン・アメリカ』(仮題)としてまとめる作業に着手する。また、本研究を国際的水準の研究に高めるため国際学会における発表を予定しているが、このための準備(レジュメ・論文の作成)を行う。 (4)オーストラリアとニュージーランドは、両大戦間期イングランド銀行の対外活動に関する先進的な研究を行っている。したがって、両国の研究者とは常にメールのやり取りによって情報交換を行っている。これを継続していきたい。さらに、時間と予算に余裕があれば、ニュージーランドのオークランド大学(Auckland University)の経済史セミナー(Economic History Seminar)に参加したいと考えている。同大学には研究テーマを共有する知り合いも複数おり、また、小人数のセミナーであるので、本研究に関する忌憚のないアドバイスを受けることができると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画は、おおまかに以下の3点に集約できる。 (1)イングランド銀行文書館(Bank of England Archives)、英国国立公文書館(The National Archives)、そしてLSE図書館(London School of Economics Library)における資料調査・収集活動のために、イギリスへの渡航・滞在費が計上されている。なお、この資料調査には少なくとも2週間の滞在が必要である。また、ラテン・アメリカやイギリス経済関係の図書・資料が充実しているアジア経済研究所図書館への資料調査・収集のため、そして、国内の学会・研究会での発表のための旅費も計上している。本年度は、以上の旅費が最大の支出項目となる予定である。 (2)2012年2月に行った国際学会(Asia-Pacific Economic and Business History Conference)での発表を踏まえ、英語論文の作成・投稿を計画しているため、英文校正の予算が計上されている。具体的には、査読英文雑誌のJournal of Latin American Studiesに投稿する予定である。また、英文雑誌への投稿にかかわる諸費用も予算も計上している。 (3)イギリス、あるいはラテン・アメリカ経済に関する学術書等の購入のための予算が計上されている。その他、コピー用紙や筆記用具等の文具等の購入に使用する予定である。 (4)時間と予算に余裕があれば、ニュージーランドのオークランド大学(Auckland University)の経済史セミナー(Economic History Seminar)に参加する。このために、ニュージーランドへの渡航・滞在費を計上する。なお、これが不可能となった場合は、この分の予算を(1)で記したイギリス滞在の延長のための費用に回し、資料収集の内容を充実させる予定である。
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Research Products
(7 results)