2011 Fiscal Year Research-status Report
非営利組織の寄付者の意思決定を規定する財務情報に関する実証分析
Project/Area Number |
23730384
|
Research Institution | Aichi Gakusen University |
Principal Investigator |
馬場 英朗 愛知学泉大学, その他部局等, 准教授 (20555247)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 財務情報 / 寄付 / ディスクロージャー |
Research Abstract |
非営利組織の寄付者が重視する財務情報を明らかにするために、認定NPO法人アジア日本相互交流センター・ICAN及びNPO法人HIVと人権・情報センターの会員・寄付者にアンケート調査を実施した。各々876名及び56名(合計932名)に調査票を送付し、70名及び31名(合計101名)から回答を得ることができた。調査内容は、第一の研究課題として寄付の意思決定に影響を及ぼすと考えられる18個の情報項目について、寄付者等がどれくらい重要だと考えているか各々5段階で評価してもらった。18項目の設問は、団体の沿革や活動目的、成果情報、収入構造、支出構造、収支差額及び内部留保、予算、人員構成、税制優遇によって構成されている。また、第二の研究課題として、非営利組織の財務データに関する13個の擬似的な選択肢を示して二者択一してもらうことにより、寄付者等がどのような財務的特徴をもつ団体を選好しているかを探った。13項目の設問は、収入構造、支出構造、収支差額、資産構成、内部留保によって構成されている。本研究によって、これまで明らかになっていなかった寄付者の財務情報に対する主観的選好と、財務データに対する潜在的選好を明らかにすることができた。すなわち、寄付者等は主観的には財務情報よりも活動目的や成果等の非財務情報に対する関心が高いこと、潜在的には寄付者等の事業収入に対する指向性が根強く、人件費や役員報酬が高いことは好まれず、事業費割合が高いことが強く好まれることが判明した。これらの研究成果により、今後の非営利組織のディスクロージャーや会計基準のあり方について、重要な示唆が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたNPO法人の寄付者・会員に対するアンケート調査を終了し、研究結果を名古屋NGOセンターや調査協力団体に報告することにより、活動現場にフィードバックすることができた。また、2012年3月に広島市立大学にて開催された日本NPO学会第14回年次大会にて「非営利組織の財務情報に対する寄付者の選好分析」として学会発表を行った。当該報告論文は現在、日本NPO学会機関紙『ノンプロフィット・レビュー』に投稿し、査読を受けている状態である。さらに、2012年7月にイタリア(シエナ)で開催される国際NPO学会(ISTR)にも発表申込を行い、受理されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
当年度はNPOの寄付者・会員を対象に調査を行ったが、次年度は一般市民を対象として、ネット調査を行う予定である。この調査は、内閣府から新しく公表された特定非営利活動法人の会計の手引に基づいて、活動計算書や注記情報に関する設問を追加して実施する。それによって、(1)市民の財務情報に対する選好、(2)寄付者と市民の選好の違い、(3)非営利組織の信頼性を高める会計基準という研究成果が新たに得られると考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ネット調査に70万円、国際学会(1~2回)での発表のための旅費に30万円、協力者謝金に10万円程度の支出を予定している。
|
Research Products
(1 results)