2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23730422
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
岩本 明憲 関西大学, 商学部, 准教授 (10527112)
|
Keywords | 再販制度 / 英国 / 日本 / 返品制 / 書籍 / 取次 |
Research Abstract |
平成23年度から25年度における「英国と日本における書籍再販制度研究」の成果については、以下の点が特に重要である。 日本における書籍再販制度研究の殆どは、法的な議論、具体的には再販制度の法的身分と独禁法の解釈問題、英国での書籍再販制度に関する裁判での主張の転載、制度改正の機運の高まりに伴う出版社、取次、書店が行う再販制度廃止反対の主張に終始しており、経済理論的な問い(すなわち、なぜ書籍業界において出版社が再販売価格維持を望むのか、または本当に出版社がそれを望んでいるのか、そして、最終的には再販制度によって最も恩恵を受けるのはどのプレイヤかという問題)については全く議論されていないことが明らかとなった。加えて、書籍に限定されない一般的な再販行為の理論研究では書籍再販制度よりは流通系列化と関連付けた理論研究が主流であり、書籍業界に見られる主として財の特性や流通構造の特殊性(または一般性)を考慮した分析は皆無であり、ゆえにそのモデルや結論を日本の書籍再販制度研究に援用することが極めて困難であることが明らかになった。(このことは拙稿(2013)における日本の再販研究の詳細な再検討・再構成によって明らかにされたことであり、その続編となる論文もまもなく上梓される見込みである。)。これは当初の予想とは異なる発見であり、日本の書籍再販制度を分析するための新たな枠組み・理論を一から構築する必要性を示唆するものである。このような試みは、英国を始め海外の研究でも見られず、それゆえに日本の書籍再販制度を説明する固有のモデルの構築が必要であること、そしてそのためには英国及び日本における既存の研究成果が(参考程度にはなるものの)ほとんど役に立たないということが学説研究を通じて明らかになった。当然のことながら、次なる研究課題として、わが国の書籍再販制度を説明する枠組みの整理に入っている段階である。
|