2011 Fiscal Year Research-status Report
医療機関の予算を中軸とした管理会計システムと組織間連携に関する研究
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23730430
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
衣笠 陽子 滋賀大学, 経済学部, 講師 (40539160)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 医療管理会計システム / 予算管理システム / アカウンタビリティ / プロフェッショナル / 会計コミュニケーション |
Research Abstract |
医療機関における総合的なシステムとしての管理会計の機能を明らかにし、医療機関における実践を目指して研究を行っている。その過程において、医療機関の管理会計システムが標準的な営利企業を想定した管理会計システムとは異なる要因を形成する環境因子として、医師や看護師などの専門職性に起因するプロフェッショナリズムに着目し、予算管理システムが媒体となる様子を明らかにした。理論的枠組みについては、アカウンタビリティを中心に理論展開を行っている。その報告の一部として、学会報告を行った(「組織構成員の相互依存性とアカウンタビリティの変容について」2011/109日本管理会計学会全国大会)。当該報告は文献調査をもとにしたアカウンタビリティの概念の再考を行ったものである。医療機関の組織的な特徴の一つである、組織内におけるチーム活動とそれに起因する組織構成員の活動の相互依存性が高い、ということに着目し、Roberts(1991)およびLindkvist & Llewellyn(2003)をベースとした文献調査により、アカウンタビリティの概念についての再考を行っている。これは当該要因がアカウンタビリティと管理可能性に大きく影響し、マネジメント・コントロールの機能を保持した上で戦略的競争力を高める際の重要な要因となるためである。さらに実証ケースとしての考察で論文を報告した。(「病院経営における管理会計の機能―病院予算を中軸とした総合管理―」『管理会計学』第19巻第2号、2012年3月)。当該論文は部門別原価計算が整備されている病院において予算を中軸とした総合管理が実際にどのように行われているのかについてケース・スタディに基づき明らかにしている。その結果,医師やコメディカルなどの専門職に対し予算の説明を媒介とすることで会計数値に対する意識の共有を作り出すことが重視されていたことが裏付けられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた海外研究者との交流のみ実施年度が遅れたが、その他の研究進捗は順調である。また非営利の医療機関を対象とした医療管理会計研究は、その規範性の重要性より、理論的枠組みの形成が急務であるために、現在の研究手順でよいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
さらなるケーススタディの実施を行う必要があるとともに、体系的な医療機関の管理会計システムの枠組みを提示する必要が生じてきている。このままアカウンタビリティと会計コミュニケーションの理論的枠組の研究を続けるとともに、実践的枠組みを可能にするべくテキスト的な著作をまとめ、ケーススタディ先の調査担当者と意識を共有する必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高額なデータ集である「病院年鑑」を購入する予定である。
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Research Products
(2 results)