2013 Fiscal Year Research-status Report
被災者・被害者からみた地域再生~自然災害と原子力災害の比較研究
Project/Area Number |
23730468
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
原口 弥生 茨城大学, 人文学部, 准教授 (20375356)
|
Keywords | 災害社会学 / カトリーナ災害 / 東日本大震災 / 環境的公正 / 避難者支援 / 災害レジリエンス / 放射能汚染 |
Research Abstract |
H25年度の研究では、東日本大震災後、研究が一時休止状態となっていたアメリカ災害調査を再開させるとともに、茨城県内で避難生活をおくる放射能災害被害者が置かれた現状や抱える課題を把握し、それを社会に発信するとともに、県内各地で展開されている避難者支援・交流事業をより実効性のあるものとするための基礎データを提供するための実態調査を行った。また、乳幼児や未就学児を含む子ども世帯特有のニーズ、あるいは高リスク避難者の現状について把握するとともに、希望者への聞き取り調査を行い避難世帯が抱える複雑な現状・課題について解明し、避難者支援の枠組みについて実態に即した政策提言を行った。具体的な研究実績は以下のとおりである。 1.茨城県内の被災者実態の調査については、2013年8月に県内3地域の未就学児世帯にたいして、事故直後の食行動に関するアンケート調査を行った。調査協力:茨城県高萩市、笠間市、常総市。940世帯に配布し、有効回答数690票(回収率73.4%)。 2.アクションリサーチをとおしての実態把握は、①ストレスケア講座(2013年5月、16日、於:茨城大学)、②原発損害賠償説明会&個別相談(2013年6月16日、11月24日、於:茨城大学)、③交流会・キャンプ等(2013年7月8日、8月19日~21日、10月27日)をとおして、広域避難者の方との交流をとおして行った。 3.茨城県内の広域避難者の実態調査については、茨城県災害対策本部ならびに県内全市町村の協力を得て2014年3月に実施した。有効発送数が1480、有効回答数が437票(回収率30%)であり、現在集計中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、自然災害と原子力災害との比較検討を行い、それぞれの災害後の地域再生過程の特徴を明らかにすることにある。具体的には、災害後の地域再生過程において、被災者が社会の中でどのように承認/認識されたのか、その認識が災害後の地域再生の方向性と関係しているのかを明らかにすることにあった。自然災害(カトリーナ災害)調査に関しては、社会的マイノリティでもあるアフリカ系アメリカ人の被災者が地域再生過程から排除される傾向にあることを明らかにし、アメリカ学会第47回年次大会にて学会報告を行った(2013年6月2日、於:東京外語大学)。 原子力災害に関しての被災者の社会的承認については、福島県以外の放射能汚染地域を「低認知被災地」として定義づけし、茨城県内の被災者調査を行った。アンケート結果は、茨城大学内での公開講座での報告(2013年 11月27日)や公開報告会「終わらない3.11原発震災の被害―北関東の被災者・福島県からの避難者調査から考える―」(於:明治学院大学、2014年2月8日)にて報告を行った。 茨城県内の広域避難者の現状と直面する課題については、アクションリサーチや広域避難者アンケート調査を行った。現在集計中の茨城県在住の方を対象とした広域避難者アンケート調査では、回収率が30%となり、震災後3年を経過した行政以外の広域避難者アンケートとしては多くの方のご協力をいただくことができた。集計後速やかに、茨城県内の広域避難者の生活再建の現状と課題を指摘する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.茨城県内の放射能汚染被害については、とくに福島原発事故直後の初期被ばくに注目した実態把握と市民・行政の動きを整理して、さらにH25年度に行ったアンケート調査結果を踏まえて、2014年6月の日本平和学会にて報告を行う予定である。学会報告で得た知見も参考にしながら成果をまとめ、刊行本の1章として執筆する予定である。 2.茨城県内の広域避難者アンケート調査については、5月末に予定されている茨城県内の市町村連絡会議にて報告の機会をいただいており、速報値ながら広域避難者の支援実務担当者への社会的還元を行う。出身自治体や現在居住地、年齢、性別等によって被災者が抱える問題などについて、丁寧に分析しアンケート調査結果は報告書としてまとめ、回答された方々、支援団体や各行政機関に配布する。学内外において、アンケート調査結果の報告会を行い、結果については広く社会に発信する。 3.2014年7月13ー19日の国際社会学会(ISA)大会での学会報告を2本、受諾されており、アメリカ・カトリーナ災害と東日本大震災の比較研究の成果、ならびに東日本大震災で茨城県がおかれた低認知被災地という現状について上記の研究成果について国際的にも発信する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画にあった米国調査が予定通り遂行できておらず、ようやくH25年度より米国調査も開始できたところであるが、予定していた渡航ができておらず、次年度使用額が生じた。 未使用額は、米国調査の実施、ならびに成果報告の社会的発信の経費に充てることとしたい。具体的には、調査のための外国旅費、学会報告の交通費、論文の抜き刷り印刷費、国際的な研究成果発信のための英語翻訳費、資料整理(アルバイト費)等である。
|
Research Products
(4 results)