2011 Fiscal Year Research-status Report
都市公共財の維持に対する正当性認識に基づくコミュニティ・ガバナンスの成立条件
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23730474
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
堂免 隆浩 一橋大学, 社会(科)学研究科, 准教授 (80397059)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 都市公共財 / コミュニティ・ガバナンス / 正当性認識 |
Research Abstract |
本研究は、正当性認識に焦点を当て、都市公共財の維持にかかわるコミュニティ・ガバナンスの成立条件を実証的に明らかにすることを目的とする。初年度である平成23年度は、1.既存研究で明らかにされている都市公共財の定義の確認、2.法律の裏付けを持つ「地区計画」と法律の裏付けを持たない地域住民による「自主ルール」の存在の確認、3.地区計画および自主ルールの関連性の確認、の作業を行った。 作業1より下記の点が明らかになった。(1)都市公共財には、私有の資産が集合することで公共的な価値が生じる財(住環境等)が存在し、住環境保全の取り組みの事例が本研究の対象として適切であること、(2)都市公共財の管理には、公共団体のみならず、地域住民自ら関与していること、を把握した。 作業2より下記の点が明らかになった。(1)住環境保全等を目的とする地区計画の制定実績が多い神奈川県横浜市を対象として、平成23年12月に横浜市都市計画課のHPを閲覧し、地区計画が102地区存在することを確認した。(2)平成20年に横浜市を対象として実施したアンケート調査、平成24年2月に横浜市都市計画課のHPの閲覧および電話によるインタビュー調査により、自主ルールが制定されている地区が35地区存在することを確認した。 作業3より下記の点が明らかになった。(1)自主ルールと重複がある地区計画は19地区存在することを確認した。(2)地区計画には、まちづくりの将来目標である「区域の整備開発及び保全の方針(以下、方針)」と建築行為等に対する規制項目である「地区整備計画」(以下、計画)が明記されている。自主ルールと重複がある地区計画19地区の内、方針のみの重複が6地区、方針および計画の重複が7地区、計画のみの重複が2地区、重複なしが2地区であり、地区計画と自主ルールは相互に関連があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、都市公共財の維持に対する正当性認識に基づくコミュニティ・ガバナンスの成立条件を実証的に検討するため、平成23~26年度の4ヵ年で、地方自治体および住民組織への調査を実施する。4ヵ年の作業計画は、1.地区計画が制定されている地域の確認、および、自主ルールとの併用の存在の確認、2.住民組織による地区計画への関与状況の確認、3.住民組織が地区計画の活動に関与あるいは不関与の理由の確認、4.住民組織の全関係者による「語り」を通した、住民組織と行政における協力関係の形成状況の確認、5.行政による地区計画の運用方針に対する認識、住民における正当性認識、および、住民における効率性認識の確認、である。 初年度である平成23年度は、1.地区計画が制定されている地域の確認、および、自主ルールとの併用の存在の確認を中心に実施した。具体的には、(1)既存研究で明らかにされている都市公共財の定義の確認、(2)法律の裏付けを持つ地区計画と法律の裏付けを持たない地域住民による自主ルールの存在の確認、(3)地区計画および自主ルールの関連性の確認、の作業を行った。結果、自主ルールと重複がある地区計画19地区の内、方針のみの重複が6地区、方針および計画の重複が7地区、計画のみの重複が2地区、重複なしが2地区であり、地区計画と自主ルールは相互に関連があることを確認し、平成23年度の目的はおおむね達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目である平成24年度は、住民組織による地区計画への関与状況の確認を実施する。平成25年度は、住民組織が地区計画の活動に関与あるいは不関与の理由の確認、および、住民組織の全関係者による「語り」を通した、住民組織と行政における協力関係の形成状況の確認を実施する。最終年度である平成26年度は、行政による地区計画の運用方針に対する認識、住民における正当性認識、および、住民における効率性認識の確認を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画では、初年度である平成23年度に、全国の地方自治体を対象としたアンケート調査の実施を企画していた。しかし、事前の電話による聞き取りから、地方自治体毎で地区計画の策定経緯あるいは住民組織の活動に多様さがある可能性が明らかとなった。アンケート調査は個別で多様である対象の情報を収集する上で最適ではない。そこで、平成23年度からのアンケート調査は平成25年度に実施することとし、まず特定の地方自治体に対象を限定し個別具体的な実態を把握することとした。そのため、平成23年度の研究費の一部を次年度使用額(未使用額)として平成24年度に繰り越した。 平成24年度は繰り越した未使用額と平成24年度の経費とを合わせてインタビュー調査を行う。研究費の使用計画は次の通りである。図書(社会組織論、コミュニティ論、都市社会学)及びインタビュー調査に使用するもの(ICレコーダ、ノートパソコンほか)などを購入するための物品費(800,839円)を要す。調査地訪問のための旅費(150,000円)を要す。調査補助および音声データの文字への書き起こしを専門業者に依頼するための人件費・謝金(250,000円)を要す。研究成果投稿料としてその他(50,000円)を要す。
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Research Products
(1 results)