2012 Fiscal Year Research-status Report
都市公共財の維持に対する正当性認識に基づくコミュニティ・ガバナンスの成立条件
Project/Area Number |
23730474
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
堂免 隆浩 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (80397059)
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Keywords | 地域公共財 / コミュニティ・ガバナンス / 正当性認識 |
Research Abstract |
本研究は、正当性認識に焦点を当て、都市公共財の維持にかかわるコミュニティ・ガバナンスの成立条件を実証的に明らかにすることを目的としている。二年度目である平成24年度は、1.一般に行政の役割である都市公共財の維持管理を住民自らが担っている地区計画の事例における住民組織の活動内容および住民の意識の考察、および、2.条例に基づく認定を受けた住民組織が都市公共財を維持する事例の確認、を行った。作業1では、一般に、地区計画は行政が審査および許可を行うのに対して、住民組織にもかかわらず地区計画の審査を行う田園調布会(東京都大田区)における参与観察を通して、下記の点を明らかにした。まず、都市計画法に基づく「地区計画」の仕組みでは、地区計画の審査を担う団体として住民組織を認定する仕組みがない。これに対し、田園調布会において住環境保全の活動を担う一部の環境委員から「本来、住民組織には審査する“権限”はないのだから、あくまで「行政による地区計画の審査ではこうなる」と相手に伝えるだけ」という意見と、他の委員から「地区計画は地域のルールなので、地区計画違反を判定しても良い」という意見が聞かれた。このように地区計画の文脈では、本来権限のない地区計画の審査に住民組織が関与するか否かという構図を確認できた。一方で、団体として確固たる方針を確立する難しさも確認できた。作業2では、神奈川県横浜市からの資料収集を通して、次の点を明らかにした。一般に、建築等の制限に関わる審査は行政が担うのに対し、横浜市では、「地域まちづくり推進条例」において認定される「地域まちづくり組織」が審査業務を担えることを確認した。つまり、都市公共財の維持を公式に住民組織が実施できていることが分かった。そのため、住民組織であるにも関わらず都市公共財の維持を担えるか否かという構図を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、都市公共財の維持に対する正当性認識に基づくコミュニティ・ガバナンスの成立条件を実証的に検討するため、平成23~26年度の4ヵ年で、地方自治体および住民組織への調査を実施する。4ヵ年の作業計画は、1.地区計画が制定されている地域の確認、および、自主ルールとの併用の存在の確認、2.住民組織による地区計画への関与状況の確認、および、その他の事例の検討、3.住民組織が都市公共財の維持に関与あるいは不関与の理由の確認、4.住民における正当性認識の確認、である。 二年度である平成24年度は、2.住民組織による地区計画への関与状況の確認、および、その他の事例の検討を中心に作業を実施した。本研究の当初の課題設定は、一般に都市公共財が行政により管理運営されるにもかかわらず住民組織が管理運営している事例があり、なぜ住民組織が管理運営できるのか、である。そして、都市公共財である住環境を行政が保全する仕組みとして「地区計画」に焦点を当て、都市公共財を管理運営する権限のない住民組織がその役割を担おうとする事例に着目してきた。その過程で、「地区計画」に関与する住民組織において、実は、内部で関与に積極的な住民と消極的な住民がおり、異なる態度の住民のどちらが主導権を握るかで住民組織の関与の実現が決まる側面があることが分かってきた。一方、作業を実施する中で、横浜市において、都市公共財を住民組織が担えるよう認定する仕組みがあることを発見した。この事例では、住民組織の構成員の合意に基づき、住民組織による都市公共財の管理運営が実現している事例である。以上の理由から、従来の計画通り地区計画のみに着目するのではなく、横浜市の事例も研究に含めた方が、研究目的の達成可能性を高めると判断した。このように、研究目的の達成可能性を高めることが出来ており、達成度を「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、住民組織が都市公共財の維持に関与あるいは不関与である理由の確認、および、関与および不関与と住民組織内の委員における正当性認識の関係を明らかにする。 三年度目である平成25年度は、横浜市の「地域まちづくり推進条例」に基づく「地域まちづくり組織」に着目し、その活動状況を把握するとともに、住民組織の運営委員における正当性認識を明らかにする。最終年度である平成26年度は、地区計画に関与している住民組織の運営委員における正当性認識を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(1 results)