2013 Fiscal Year Research-status Report
都市公共財の維持に対する正当性認識に基づくコミュニティ・ガバナンスの成立条件
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23730474
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
堂免 隆浩 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (80397059)
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Keywords | 地域公共財 / コミュニティ・ガバナンス / 正当性認識 |
Research Abstract |
本研究の目的は、正当性認識に焦点を当て、都市公共財の維持にかかわるコミュニティ・ガバナンスの成立条件を実証的に明らかにすることにある。三年目である平成25年度は、都市公共財として都市公園に着目した。 都市公園は、一般に行政が維持管理を行う。これに対し、一部の自治体では、住民自らが都市公園の維持管理に携わっている。そこで、平成25年度の作業では、1.住民組織による都市公園の維持管理を類型し、2.条例により住民組織の活動を規定している事例を探索し、3.住民組織による活動および住民の正当性認識について考察を行った。作業1では、既存研究のレビューより、住民組織による都市公園の維持管理を分類した。分類の結果、①町内会や自治会による公園の清掃等、②指定管理者による管理、および、③条例に基づき、住民による公園管理の提案およびその実施、に整理できた。作業2では、分類③の住民による公園管理の実施に着目し、事例を探索した。まず、公共施設の管理に対する住民提案を規定している条例を調べ、全国で12自治体存在することを確認した。その内、公園の維持管理に関する事例は、練馬区において1事例(NPO法人公園づくりと公園育ての会)であった。作業3では、練馬区およびNPO法人に対するインタビュー調査を実施した。インタビュー調査より、NPO法人のメンバーが自らの活動に正当性があると認識している理由を確認した。それは、1)平成17年に敷地が都市計画公園に決定される以前から住民組織が敷地を管理してきたこと、2)多くの住民が公園を自由に管理したいという要望を持っていること、3)条例に基づき住民組織が公園を管理する団体として認定されていること、である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、都市計画法に基づく「地区計画」を対象として研究を進める予定であった。しかし、平成23年度および平成24年度の実績より、必ずしも「地区計画」が都市公共財の維持管理の事例として最も適切とは言えないことが判明した。その理由は、「地区計画」の事例では、計画の提案は住民が実施できるものの、提案の実現は行政のみが担うためである。そのため、平成25年度では、より適切な事例を探索した。その結果、地方自治体が独自に制定する「まちづくり条例」の住民提案制度に基づく事例がより適切であることを確認した。その理由は、住民が都市公共財を自ら維持管理することを提案し実施できるためである。都市公園は、公共財の典型である。そこで、対象事例を、「地区計画」から都市公園に対象を変更することとした。そして、都市公園の管理内容を住民が提案すると共に、提案の実現も住民が担っている「NPO法人公園づくりと公園育ての会」を発見し、正当性認識を確認した。対象事例の変更という想定外の事態が生じたものの、“都市公共財”の適切な対象を定め、その事例を発見できたことから、「おおむね順調に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成26年度は、条例に基づき設立された住民組織が住環境保全に取り組んでいる事例を対象し、活動の実施に対する住民における正当性認識を明らかにする。特に、横浜市の「地域まちづくり推進条例」に基づく「地域まちづくり組織」に着目し、その活動状況を把握するとともに、アンケート調査を実施し、住民組織の運営委員における正当性認識を明らかにする。そして、平成23年度から平成26年度までの研究成果をまとめ、正当性認識の成立条件を提示する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画では、都市計画法に基づく「地区計画」を対象としていた。これに対し、平成23年度および平成24年度の実績から、必ずしも研究対象として地区計画が最も適切であるとは言えないことが判明した。そのため、平成25年度では、都市公共財として都市公園に対象を変更した。当初、平成25年度ではアンケート調査を実施する予定であった。しかし、対象の変更に伴い、平成25年度はインタビュー調査を実施したため、予算を次年度に繰り越すことととした。 当初、平成25年度に実施予定であったアンケート調査を、平成26年に実施予定である。
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