2011 Fiscal Year Research-status Report
受忍と犠牲――戦後補償制度と戦死者追悼における国民創出の制度と文法
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23730482
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
直野 章子 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (10404013)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国民 / 戦後補償 / 戦争被害受忍論 |
Research Abstract |
本研究は「受忍」と「犠牲」という概念に着目しながら、戦後補償法制度の成立と変遷、および戦死者追悼における〈国民創出の制度と文法〉を描き出すことを目的としている。本年度は、戦後補償の法制度に関する一次資料、戦争被害受忍論の判例と政策に関する一次および二次資料の分析を「国民」概念との関連で行うことを目指した。すでに入手済みの戦後補償の法制度に関する資料に加え、受忍論の原型を形作るきっかけとなった在外財産問題に関しては「在外財産問題審議会議事録」および議事録関連資料(国会公文書館所蔵)、名古屋空襲裁判の一次資料(立命館大学平和ミュージーアム所蔵)を収集した。「原爆被爆者対策基本問題懇談会議事録」の分析、図書館における文献調査も含めて、戦後補償制度の成立と変遷において、被害に対する補償および受忍の対象となる範囲がどのように形成され、変化したのかを整理した。そのうえで、現在進行形の東京空襲および大阪空襲被害者たちの訴訟における国側の主張を分析した。また、「広島県動員学徒等犠牲者の会」の会長に聞き取り調査を行い、会発足時から2000年までの会報を収集し、整理した。さらに、「学徒等犠牲者の会」が発刊している書籍の内容分析を、特に「慰霊」「追悼」と「国民創出」との関係においておこなった。今年度行った資料収集および整理、分析のうち、戦後補償制度、特に戦争被害受忍論を中心に、戦争社会学研究会にて中間報告的な発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書にある今年度の研究実施計画は、ほぼすべて達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降においては、戦死者追悼の部分について、精力的に調査と先行研究の分析を行う。資料収集に関しては、「広島県動員学徒等犠牲者の会」の関連資料や関係者に対する聞き取り調査を引き続き行うとともに、靖国神社と日本被団協関連の資料収集と分析も行う予定である。戦後補償制度については、不足する資料を補う程度の調査を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
来年度においては、、「広島県動員学徒等犠牲者の会」の関連資料や関係者に対する聞き取り調査を行うための旅費、印刷費用、日本被団協や靖国神社、戦死者追悼に関する資料および先行研究文献の収集のために、主に研究費を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)