2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730506
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
渡辺 めぐみ 龍谷大学, 社会学部, 講師 (60401577)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | グリーンツーリズム |
Research Abstract |
本研究の目的は、第一に、日本のグリーン・ツーリズムの中核をなしている、農村女性起業に着目し、そこにおける女性の感情労働の実態とその問題点をさぐることである。第二には、都市向けに提供されている農業体験、食品加工体験などの田舎体験メニューの中に潜むジェンダーを明らかにする。同時に、農家民宿などの女性が演出している「あたたかいふるさと」の「おかあさん」キャラクターは、どのような女性像を提示しているのかを解明し、現在のグリーン・ツーリズムの中に存在するジェンダーバイアスを解明する。そのために、平成23年度には、まず、グリーン・ツーリズムの広告などの資料を分析し、都市側にグリーン・ツーリズム(とくに農村女性の活動)がどのようなイメージとして提示されているのかを分析した。さらに1軒の農家民宿への宿泊を通じて、参与観察及び従事者の男性・女性へのインタビューを実施した。対象とした農家民宿は、「農林漁家民宿おかあさん100選」に選定された民宿のうち、飛騨高山地域の民宿である。また、学生に被験者として参加協力を呼びかけ、農業体験、食品加工体験などを行ってもらい、その様子を参与観察することによって、具体的な作業内容の中でどのようなジェンダーの実践が行われるかを分析した。今年度、明らかになった知見は次の通りである。インタビューから明らかになったことは、第一に、農村女性がつくりあげている「女将」像は、元気がよく、子どもや青年に親しみを持ち、配慮を惜しまない女性像であった。第二に、このことをふまえて、「採算」を度外視した人間関係をつくりあげるという感情労働を行っているということであった。また、参与観察から明らかになったことは、食品加工体験を行っている学生の間では、学生自らが積極的に性別役割分業を行う傾向があることだ。しかも、こうした性別役割は現場で是認されがちであることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的のうち、第一は、日本のグリーン・ツーリズムの中核をなしている、農村女性起業に着目し、そこにおける女性の感情労働の実態とその問題点をさぐることである。このことについては、1つのケースの調査データが得られた点で進捗しつつある。しかし、農家民宿などのモニターの学生を、その民宿の規模に合わせて適切な人数、しかも男女比を考慮して集めることが難しく、複数地域の調査が行えなかったという点で遅れているといえる。また、震災のため調査地を変更したことにより、同地域の農家レストランや直売所などの農村女性起業の活動について、従事者である農村女性へのインタビューを実施することができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も、「農林漁家民宿おかあさん100選」に選定された民宿を中心に、参与観察とインタビュー調査を実施していく。平成23年度の調査の遅れを取り戻すため、夏期休業中の学生を被験者とした農家民宿調査を、グリーンツーリズムが盛んな長野県で実施する予定である。さらに、平成23年度に実施できなかった農村女性起業の活動についても調査を実施する。候補地としては兵庫県を予定している。また、日本と海外のグリーンツーリズムの担い手の比較研究を新たな課題として加える予定である。これは、初年度の研究の遅れから生じた予算の一部を充当し、課題をより発展させる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に引き続き、「農林漁家民宿おかあさん100選」に選定された民宿を中心に、参与観察とインタビュー調査を実施していく。平成23年度に実施できなかった地域比較を行うために調査回数を増やす。同様に農村女性起業の活動についても調査を実施する。また、行政の取り組みについても同様に明らかにする。候補となるのはまず愛媛県の「ファームインRAUM 古久里来」である。内子町は、「うちこ観光交流プロジェクトを」実施している。ゆえにこれらを調査対象とする。さらに、日本のグリーンツーリズムの特徴をより浮き彫りにするために、海外でのグリーンツーリズムの状況についても現地調査を行う必要があると考え、イギリスのグリーンツーリズムの現地調査を行う。
|