2012 Fiscal Year Research-status Report
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23730506
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
渡辺 めぐみ 龍谷大学, 社会学部, 准教授 (60401577)
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Keywords | グリーンツーリズム / 農村女性起業 / フェアトレード |
Research Abstract |
本研究の目的は日本のグリーンツーリズムの中核をなしている、農村女性起業に着目し、そこにおける女性の感情労働の実態とその問題点をさぐることである。そこで、「農林漁家民宿おかあさん100選」に選定された民宿を中心に、参与観察とインタビュー調査を実施し、同様に農村女性起業の活動についても調査を進めてきた。 そのなかで、「農林漁家民宿おかあさん100選」を推進する主体が、イギリスのグリーンツーリズムを参考にしていることが明らかになった。 そこで、平成24年度は、イギリスのグリーンツーリズムとの比較調査を実施した。調査地は、オックスフォードシャの近郊農村地域である。調査の結果、イギリスでは、農家民宿においても、女性の役割は、あくまでも生産が中心であり、民宿の仕事やいわゆる「おもてなし」というべき感情労働も最小限に抑えられていることがわかった。接客時間も少なく、客の相手としてマスコット犬を放すなどの工夫がされている。イギリスには、「パブ」に行くという楽しみがあるため、農家民宿の夕食はオプションとなる。この夕食も、家族の食事と同じものを提供しているのである。日本では、女性の接客や地のものを使った手のかかる料理が期待される。しかし、これでは生産活動と農家民宿の仕事の両立は過重になりがちである。日本でも、農家レストランなどと組み合わせ、地域で「おもてなし」の分業を行うことが必要であると考えられる。 また、オックスフォード市では牛乳を適正価格で販売するべきであるという運動や、国内産の農作物を購入促進する運動がある中で、同時にフェアトレード運動も盛んであった。しかし、フェアトレードで食品を輸入することと、地産地消とは矛盾する。この問題意識をもとに、日本におけるフェアトレードと地産地消、農村女性の食品加工の記事分析を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本のグリーンツーリズムにおけるジェンダーの調査研究を進める中で、日本が参考としているイギリスのグリーンツーリズムの実態を把握する必要性が生じ、調査対象を変更することになった。そのため、日本農村の調査は繰り越しとなった。しかし、このイギリス調査を発端として、フェアトレード運動と地産地消運動との矛盾が明らかになり、研究テーマはより発展している。
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Strategy for Future Research Activity |
イギリスのグリーンツーリズムと日本のグリーンツーリズムをジェンダーの観点から比較し、日本の課題を明らかにする。したがって、日本農村における農家民宿をはじめとするグリーンツーリズムの調査研究を進めていく。 そして、現在の農村女性起業に関する新聞記事分析と同時に、フェアトレード運動と地産地消運動の矛盾についても記事分析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
グリーンツーリズム推進地において、学生被験者を同行し、農家民宿その他の体験を行ってもらい、学生被験者、サービス提供者である農村女性の相互行為をジェンダーの視点から分析する。そのため、旅費、宿泊費、体験費、インタビュー謝金、インタビューの文字おこし料金などが必要となる。 また、フェアトレード運動と地産地消運動の記事収集と整理のため、研究補助者を雇用し、データの解析を効率的に進める。
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