2011 Fiscal Year Research-status Report
「非集住地区」で生活する在日コリアンの個人化と帰属意識の変容に関する研究
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23730511
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川端 浩平 京都大学, 文学研究科, 研究員 (80563965)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
本研究課題は、「地方」の非集住地区で生活する在日コリアンの若い世代(10代後半から30代半ばくらいまで)に対して参与観察とインタビュー調査を行い、エスニシティの形成と日常生活のなかで経験する差別の実態を把握することにある。その際、エスニシティの問題が地域社会の日常的リアリティのなかでいかに諸個人に対して回帰してくるのかを分析することを通じて、ナショナリズムや差別の現代的特徴を明らかにすることを目的とする。平成23年度は、非集住地区における在日コリアンの若い世代へのインタビュー調査を行った。当初の計画通り、これまで調査を行ってきた岡山市と倉敷市の朝鮮総聯の下部組織である(1)在日本朝鮮青年同盟、(2)在日本朝鮮青年商工会、(3)在日本朝鮮留学生同盟と民団の下部組織である(4)在日本大韓民国青年会、(5)いずれにも属さない在日コリアン、さらには2003年度から申請者が代表者を務めている多文化共生を目指す市民グループである(6)ダイアローグ岡山(福武文化教育財団支援事業)に参加している若い世代の在日コリアンの中から、非集住地区で生活している者を選定してインタビュー調査を実施した。とりわけ本研究において重要だと考えられる(5)の調査対象者を獲得するために、他の調査対象者にスノーボールサンプリングの要領で紹介してもらった。またこの間、多文化社会研究会(代表者:岩渕功一【早稲田大学】)のメンバーと行った共同の研究調査においては、本研究課題でもある在日コリアンのダブルの若者の帰属意識に関する実態調査を行った。半構造化された質問票をもとに様々なエスニシティを背景に持つ人びとに対してインタビュー調査を行い、それらのデータを異なったエスニシティ間におけるアイデンティティ形成や差別の現実に関する比較調査に用いた。以上、今年度の調査研究から得られた成果は、学術誌や口頭発表によって発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施の概要でも述べたように、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。平成23年度の目標は、これまで調査を行ってきた岡山市と倉敷市を中心としたネットワークを通じて、さらに不可視化される存在である非集住的環境で生活する在日コリアンの若者の帰属意識に関する調査を進展させることにあった。とりわけ、研究目的にも掲げていた特定の民族組織やネットワークに所属しない在日コリアンの若者のインフォーマントを獲得することが予定通り進んだことは収穫であった。このことによって、平成24年度に計画していた参与観察型のインタビュー調査を潤滑に遂行することが可能となった。また、これらのフィールド調査を遂行するとともに、研究調査の理論的枠組みを、近年の在日コリアンの若い世代のエスニシティに関する研究成果と地域社会における在日コリアンの研究成果のレビューを通じて鍛え直した。また、口頭発表や学術論文を通じて、今年度の成果を迅速に公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、第一に、平成23年度の研究調査を継続する。特に、特定の民族組織やネットワークに所属していない、在日コリアンの若者に対する参与観察とインタビュー調査を集中して行う。この点に関しては、平成23年度にインフォーマントととのネットワーキングが形成されているので、今年度は彼/彼女らにさらに密着した研究調査を進めていく予定である。第二に、在日コリアンの配偶者や親族である日本人へのインタビュー調査を行う。その際、調査対象者の在日コリアンからインフォーマントを紹介してもらう。特に、エスニシティが変容する重要な契機となる恋愛・結婚と子供をめぐる国籍の選択に対する考えについてのインタビュー調査を行う。ただし、第二の調査がうまく行かない場合には、第一の調査に集中することにする。この間、前年度のデータ整理を行うとともに、研究成果として公表していくための準備作業を行う。これらの成果を国内外の学会や研究会等で発表するとともに、日本語と英語の論文を合計日本、国内外の査読付きジャーナルに投稿する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度も継続して、岡山を中心とした研究調査を進めていく予定であり、現地調査に必要な交通費と宿泊費に大半の予算を使用する予定である。また、岡山以外の地域における実態調査も進めていく予定である。すでに現在、京都・大阪・兵庫の関西圏とともに、広島におけるフィールド調査を進めており、これらを進展させていく予定である。これらとともに、共同研究や研究成果公表のための学会や研究会参加のための交通費と宿泊費が必要となってくる。また、前年度実施したオーストラリアのキャンベラにある戦争博物館(War Memorial)の資料調査(オーストラリア進駐軍による岡山の在日コリアン等をめぐる動向に関する記録資料)を行う予定である。現地調査の他には、関連書籍やPC周辺機器等の消耗品を購入する予定である。
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Research Products
(10 results)