2012 Fiscal Year Research-status Report
「非集住地区」で生活する在日コリアンの個人化と帰属意識の変容に関する研究
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23730511
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
川端 浩平 関西学院大学, 先端社会研究所, 専任研究員 (80563965)
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Keywords | 国際情報交換(オーストラリア) |
Research Abstract |
本研究は、「地方」の非集住地区で生活する在日コリアンの若い世代(10代後半から30代半ばくらいまで)に対して参与観察とインタビュー調査を行い、エスニシティの形成と日常生活のなかで経験する差別の実態を把握することにある。その際、エスニシティの問題が地域社会の日常的リアリティのなかでいかに諸個人に対して回帰してくるのかを分析することを通じて、ナショナリズムや差別の現代的特徴を明らかにすることを目的とする。平成24年度も引き続き、非集住的環境で生活する在日コリアンの若い世代へのインタビュー調査を行った。当初の計画通り、これまで調査を行ってきた岡山市と倉敷市の朝鮮総聯の下部組織である①在日本朝鮮青年同盟、②在日本朝鮮青年商工会、③在日本朝鮮留学生同盟と民団の下部組織である④在日本大韓民国青年会、⑤いずれにも属さない在日コリアン、さらには2003年度から研究代表者が代表者を務めている多文化共生を目指す市民グループである⑥ダイアローグ岡山に参加している若い世代の在日コリアンの中から、非集住的環境で生活している者を選定してインタビュー調査を実施した。昨年度に続き今年度も、本研究において重要だと考えられる⑤の調査対象者を獲得するために、他の調査対象者にスノーボールサンプリングの要領で紹介してもらい、インタビュー調査を実施した。またこの間、昨年度から継続している多文化社会研究会(代表者:河合優子【立教大学】)のメンバーと行った共同の研究調査においては、本研究課題でもある在日コリアンのダブルの若者の帰属意識に関する実態調査を論稿としてまとめた(2013年7月出版予定)。また、岡山での在日コリアンの調査を進めて10年が経過したこともあり、10年前にインタビュー調査を実施した人びとの追跡調査を開始した。この調査過程で、在日コリアンの配偶者や親族である日本人へのインタビューを実施することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施の概要でも述べたように、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。平成24年度の目標は、これまで調査を行ってきた岡山市と倉敷市を中心としたネットワークを通じて、さらに不可視化される存在である非集住的環境で生活する在日コリアンの若者の帰属意識に関する調査を進展させることにあった。前年度に在日コリアンの若者のインフォーマントを獲得することが予定通り進んだことで、本年度に計画していた参与観察型のインタビュー調査は潤滑に遂行することができた。これに加えて本年度は、テーマに掲げている非集住的環境の内実を明らかにしていくうえで、概要にも述べた10年後の追跡調査を開始することになった。このことにより、在日コリアンたちの生活領域の流動性が明らかになるとともに、「若者」や「帰属感覚」をキーワードにしてきた本研究を見直す必要性を確認することができた。またその過程で、在日コリアンの配偶者や親族である日本人へのインタビュー調査を行うこともできた。また、これらのフィールド調査を遂行するとともに、研究調査の理論的枠組みを、近年の在日コリアンの若い世代のエスニシティに関する研究成果と地域社会における在日コリアンの研究成果のレビューを通じて鍛え直した。その成果は、口頭発表や学術論文を通じて公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、第一に、平成23・24年度の研究調査を継続する。特に、特定の民族組織やネットワークに所属していない、在日コリアンの若者に対する参与観察とインタビュー調査を継続して行う。第二に、今年度行った10年後の追跡調査を実施し、彼/彼女らの関心事の変容を考察するとともに、エスニシティ・階層・ジェンダーが交錯する(intersectionality)領域としてフィールドを捉えなおす作業を試みたいと考えている。第三に、追跡調査の過程で出会う在日コリアンの配偶者や親族である日本人へのインタビュー調査を行う。この間、過去2年分のデータ整理を行うとともに、研究成果として公表していくための準備作業を行う。これらの成果を国内外の学会や研究会等で発表するとともに、日本語と英語の論文を合計二本出版する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度も継続して、岡山を中心とした研究調査を進めていく予定であり、現地調査に必要な交通費と宿泊費に大半の予算を使用する予定である。また、岡山以外の地域における実態調査も進めていく予定である。平成23年度より、京都・大阪・兵庫の関西圏とともに、広島におけるフィールド調査を進めており、これらを進展させていく予定である。これらとともに、共同研究や研究成果公表のための学会や研究会参加のための交通費と宿泊費が必要となってくる。また、昨年度予定していたオーストラリアのキャンベラにある戦争博物館(War Memorial)の資料調査(オーストラリア進駐軍による岡山の在日コリアン等をめぐる動向に関する記録資料)を行うことができなかったため繰越金が発生した。この繰越金は、同調査を今年度実行する際に使用する予定である。現地調査の他には、関連書籍やPC周辺機器等の消耗品を購入する予定である。
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Research Products
(5 results)