2012 Fiscal Year Annual Research Report
菊池俊諦の児童保護事業職員養成における「児童の権利」擁護認識に関する研究
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23730538
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Research Institution | Tohoku University of Community Service and Science |
Principal Investigator |
竹原 幸太 東北公益文科大学, 公私立大学の部局等, 講師 (30550876)
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Keywords | 児童の権利 / 親権 / 児童保護 / 非行 / 総合的児童保護法 / 感化教育 / 少年教護 / 武蔵野学院 |
Research Abstract |
本年度は、前年度整理した菊池俊諦の児童保護事業職員養成活動記録を軸として、職員養成場面における「児童の権利」の内実について考察を加えた。この点については、第40回社会事業史学会(於日本女子大学)において報告を行い、菊池の「児童の権利」論は劣悪な教育環境にある児童の保護義務を国家に喚起するために主張され、適切な親権を行使できない保護者に代わり、感化院長が親権を代行することが「児童の権利」保障に通ずると児童保護事業職員に力説したことを明らかにした。その上で、菊池は戦時下の児童保護事業職員養成においても児童の観点に立った「児童の権利」を説いたものの、その論理構造は親権の国家的擁護の反射的利益として「児童の権利」が導かれる論理となっており、受講者には家族国家観の枠組みの中で児童が捉えられていたのではないかと仮説を立て、第41回社会事業史学会(於淑徳大学)において継続して検討することとした。 また、家族国家観の枠組みで「児童の権利」が唱えられる限界はあるものの、菊池が「児童の権利」を基盤として感化法と少年法とで二分化される非行児童保護制度を統一しようとした意義について考察を加えた。この点については、第60回日本社会福祉学会(於関西学院大学)において報告を行い、菊池の非行児童をめぐる総合的児童保護法構想は、今日言われる子どもの権利基盤型アプローチに通じ得る視点が内包されていることを明らかにした。 上記の報告を踏まえ、菊池の職員養成活動記録については、『東北公益文科大学総合研究論集』23号(2013年1月)に投稿した。また、菊池の「児童の権利」を軸とした総合的児童保護法構想については、教育福祉研究の観点から検討を行い、『日本社会教育学会紀要』へ投稿した(修正掲載の連絡通知有)。
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