2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730596
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Research Institution | Kobe Yamate University |
Principal Investigator |
村上 幸史 神戸山手大学, 現代社会学部, 准教授 (00454778)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | しろうと理論 / 幸福観 / 主観的幸福感 |
Research Abstract |
日常生活の中では、その真偽に限らず、あたかも量に限界がある資源のように取り扱われている事柄がある。この資源の限定観とも呼べる言説には、「減る」や「奪う」、「定量である」などの形で表現され、「個人が成功や幸福を得るための資源には何らかの形で限りがある」という特徴が見られる。そのため、このような考え方が個人の主観的な幸福感と結びついていると考えられる。 ただし、資源の限定観は、対人間を含めた特定の社会での限定性を唱えるものと、個人単位で限りがあると考える説に分けることができる。本研究では前者の対人間を含めた特定の社会での限定観が、個人の主観的な幸福感と結びついており、特に他者の幸福や不幸と比較した相対的な側面で影響が強いと考えている。 本年度は特定の社会における資源の限定観の中でも、特に実資源ではない言説に注目し、まず言説の抽出を試みた。具体的には、本やwebから資源の限定観に該当するものとして「~は定量である」「~を奪う(奪われる)」「~を奪い合う」「~の量は決まっている」に類する表現が用いられている文章を抽出し、類似した項目をまとめ、実資源に該当すると考えられるものを除いた40項目を選出した。 次にこの40項目に対して、質問紙調査を行った。質問は以下の5問である。世界やあなたの周りで一定の量が決まっており、取り合いになることがあると思うもの(対人的定量感)、他者から奪ったり、奪われたりする感じがするもの(対人的剥奪感)、他者に何らかの方法で与えたり、渡すことができると思うもの(対人的譲渡感)、一時的(一日や一年を含む)にであれ、個人が持っている量には限りがある(あるいは、使えば減るような気がする)もの(個人内減少感)、一時的ではなく、一生のうちで個人が持っている量が決まっており、使えば減るような気がするもの(個人内定量感)に関する質問紙調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の質問紙調査を元に、昨年度末に業者に委託した調査を企画していたが、回答者の選別(収入区分など)に時間がかかり、現在も交渉及び委託中である点から、やや進行が遅れていると判断した。これについては遅くとも5月末には調査の完了を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、上記した進行中の調査結果を元にして、主観的幸福感に関する変動が、資源の限定観と関連するのかどうかを確かめるため、他者の不幸に接することで一時的に変動するような、感情面での主観的幸福感に関する2つの実験を行う。 第一に、成功が限定される構造における選択実験を行う。これは2者間で互いに不確実な選択を行い、成功(勝利)した者が利益を得ることができる、又は罰を免除されるという構造を持つ状況下での主観的幸福感の変動を見ようとするものである。このような状況への好みと、実際に選択を行った場合に、相手の結果に応じて主観的幸福感に関する変動が見られるのかどうかを検討する。 第二に、他者の不幸や幸福に対する受容の仕方に関する実験を行う。この実験では資源の限定説により構成した尺度項目を測定し、これが好む情報の違いと関連しているのかについて、新聞記事とネット上のニュース配信記事を用いて検討する。加えて、記事内容に関する記憶や評価(好みや非難の正当化)についても測定を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究費に関する主とする使用用途は以下の4つである。第一に進行中の調査に関して、業者に委託を行ったために、この支払い費用を予定している。第二にこの結果を、本年度開催される日本心理学会大会、及び日本社会心理学会にて発表予定のため、その参加費や出張費に用いる。第三に他者の不幸や幸福に対する受容の仕方に関する実験の前段階として、新聞記事の分析を行う必要があるため、新聞社が発売するデータベースを購入予定である。最後に実験参加者、実験協力者、分析の協力者に支払う謝礼を見積もっている。
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