2011 Fiscal Year Research-status Report
小中学生の制裁的いじめ加担における恨み感情とシャーデンフロイデの役割
Project/Area Number |
23730604
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
沢田 匡人 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (40383450)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | シャーデンフロイデ / 同情 / 制裁的いじめ / いじめ加担経験 / 観衆 / 傍観者 / 恨み感情 |
Research Abstract |
本研究の目的は,特定の他者の不幸を企図する「恨み感情」と,特定もしくは不特定の他者の不幸を喜ぶ「シャーデンフロイデ」に焦点を当て,こうした感情の喚起メカニズムを明らかにすることにある。具体的には,主に小中学生を対象とした大規模な調査から,恨み感情とシャーデンフロイデが学校で生じるいじめに及ぼす影響の解明を通じて,制裁的ないじめに加担する行為の抑止や,いじめの終息を早めるための効果的な介入に寄与する成果の提供を目指すものである。 学級集団で発生するいじめの維持や助長に着目するならば,いじめを囃し立てたり,悪い噂を流す片棒を担ぐなど,結果としていじめに加担する観衆や,それに近い役割を果たす傍観者の存在は無視できない。いじめの取り巻きや傍観者の感情に着目すると,彼らの中には,シャーデンフロイデを感じている者も少なくないと考えられる。シャーデンフロイデとは,他者が不幸になるのを第三者的な立場から喜ぶ感情であり,いじめとの関連性が指摘されてはいるものの,実証研究はまだ少ない。 こうした点を踏まえて,23年度は,制裁を理由とするいじめを目撃した際に経験される感情と,過去にいじめに加担した経験に着目した調査を実施して一定の研究成果を得た。たとえば,小中学生1400名弱を対象とした質問紙調査では,シャーデンフロイデ,同情,いじめ加担経験に基づくクラスター分析を通じて,いじめの観衆と傍観者は大きく4タイプに類型化されることが明らかとなり,学年毎のその内訳から,いじめを哀れむ小学生と,いじめを楽しみつつ取り巻く中学生の様態が明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画通りに順調に進展している。とりわけ,シャーデンフロイデといじめ加担経験に基づく小中学生の類型化が見出されたことは,今後の調査を進めていく上で基礎となる成果といえよう。ただし,恨み感情といじめ加担経験との関連については調査を予定していたものの実施することができなかったため,次年度以降の課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
小中学生のいじめ加担経験とネガティブな感情(恨みだけではなく,関連する感情である妬みや憤りなども含む)の関連性の検討を行なう。本研究では質問紙による調査が主となるが,担任教師から関係性攻撃に関する行動評定や,いじめ量刑判断について成人で得られた知見に基づいた実験など,いじめにまつわる変数を多面的に測定していく。調査は,栃木県を中心とした公立小中学校に通う小中学生を対象としたものを計画しており,既に学校長より調査の内諾を得ている。 また,恨み感情を含む社会的感情の喚起プロセスの解明にかかわる基礎的なデータ収集の必要性が高まってきたことから,並行して実施すべき課題として取り組んでいきたい。今後はデータ収集を慎重に進めていき,年度の後半からは成果発表にも努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度で得られた成果を積極的に関連学会で発表していくと同時に,いじめとシャーデンフロイデの関連について継続的に調査していく。研究費は,そのために必要な備品(ノートパソコン),データ解析とプレゼンテーションに必要な消耗品(各種統計ソフトなど),ならびに調査実施やデータ解析の補助に必要となる人件費,成果発表のための旅費などで使用される。
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