2011 Fiscal Year Research-status Report
社会恐怖と対人恐怖の相違に対応した不安維持プロセスの解明と介入法の研究
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23730652
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
清水 健司 信州大学, 人文学部, 准教授 (60508282)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 対人恐怖 / 社交不安障害 / 自己愛 / 強迫傾向 / 森田療法 / 完全主義 / 認知行動療法 / とらわれ |
Research Abstract |
これまで社会恐怖と対人恐怖は,恥の病理として一括りにされてきた。しかし,近年では前者が回避的な防衛方略を用いやすく,後者が強迫的な防衛方略を用いやすいといった相違に関する指摘もなされつつある。この両者における防衛の相違は,不安の維持プロセスや介入法の選択にも影響を及ぼすと考えられるため,これに対応できる新たな実証研究が早急に求められている。本課題では,社会恐怖と対人恐怖のアナログ類型が抽出可能な実証モデルを援用し,各々で異なる不安維持プロセスの要因解明,当該の統合的知見を踏まえた,各々に有効な介入プログラムの策定および介入効果の検証を行う。 そこで今年度においては,主に対人恐怖に見られるような強迫的な防衛方略を持つ場合の実証的な不安維持モデルを作成することが研究の主眼となる。まず,大学生を対象とした調査研究の結果,完全主義の下位尺度である「ミスへのとらわれ」が強くなるとネガティブ思考の悪循環に陥りやすいことが示唆された。その上で,必ずしも100%の成功を求めるわけではない「高目標設置」が高くなると悪循環は軽減されることが示され,100%の成功のみを至上命題とする「不合理な信念」が高くなると,ネガティブ思考の悪循環はより強いものになることが示された。この結果は,完璧に固執する認知体系が皮肉にも自己の苦悩深化につながることを示唆するものである。また森田療法においては,不安の増幅現象を「とらわれ」として扱う。このような不安の悪循環を生みだす要因には,自らに高い目標を課す「生の欲望」,失敗や恥を恐れる「死の恐怖」,曖昧な状況を苦手とするような「思想の矛盾」が関連していることが考えられるため,当該概念に沿った新たな測定尺度の予備的検討も随時進められている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては,強迫的な態度が不安の悪循環をもたらすという現象を実証することであった。新たな尺度作成はまだ途上であるものの,完璧を求める認知体系がネガティブ思考の悪循環を招くという結果が既に確認できているということは大きな成果であると言えるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後においても,引き続いて強迫的な態度が不安の悪循環を示すという概念モデルを作成してゆく。そのため,森田療法が扱う「とらわれ」に関して調査研究・実験研究の観点から実証化することに研究の主眼を置いてゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が進捗したため,次年度使用額が生じている。今後の研究成果がより充実したものになるよう、これらを効果的に生かしてゆきたい。まず,研究課題の進捗を迅速に進めてゆくため,調査研究・実験研究の統計的な分析に必要となるデータ分析ソフトの購入を行う。また,研究結果を随時公開してゆくために旅費を使用し,研究の進捗を早めるために謝金も適宜使用してゆく。
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