2012 Fiscal Year Research-status Report
社会恐怖と対人恐怖の相違に対応した不安維持プロセスの解明と介入法の研究
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23730652
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
清水 健司 信州大学, 人文学部, 准教授 (60508282)
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Keywords | 対人恐怖 / 社交不安障害 / とらわれ / 自己愛 / 森田療法 / 認知行動療法 / 強迫傾向 / 完全主義 |
Research Abstract |
これまで社会恐怖と対人恐怖は,恥の病理として一括りにされてきた。しかし,近年では前者が回避的な防衛方略を用いやすく,後者が強迫的な防衛方略を用いやすいといった相違に関する指摘もなされつつある。この両者における防衛の相違は,不安の維持プロセスや介入法の選択にも影響を及ぼすものと考えられるため,これに対応できる新たな実証研究が早急に求められている。 本課題では,社会恐怖と対人恐怖のアナログ類型が抽出可能な実証モデルを援用し,各々で異なる不安維持プロセスの要因解明,当該の統合的知見を踏まえた,各々に有効な介入プログラムの策定および介入効果の検証を行う。 そこで,当該年度では,思考抑制課題による不安維持プロセスの実験的検証が大きな課題であった。不安維持プロセスの差異検証のため,Wegner(1994)の思考抑制課題を中心課題として用いた。対象者に「あなたを悩ます日常の心配思考」を1つ想起させ,「その思考だけは絶対に考えない」という単純抑制条件,また「思考が浮かんでも自由にしてよい」統制条件,また「思考が浮かんだら自由なことを考えて追い出す」方略使用条件の各3条件にて,5分間で浮かんだ心配思考数の測定を行った。当該年度においては,無事にデータの収集を終えることができたため,大きな成果であったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目において取得された調査データの分析・研究成果の発表が無事に終了しており,2年目においても,実験データの収集が無事に完了されている。本研究課題において重要な調査・実験データの収集がスムーズに進行されていること,また前年度の成果が既に発表媒体にまで達していることを踏まえると,研究はおおむね順調に進展しているものと十分に判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後における研究の推進方策については,2つに大別される。 まず1つめは,個人別不安態度構造の検討と,これまでの実証知見との統合的整理である。これは,これまでの調査・実験による社会恐怖と対人恐怖の比較知見を踏まえ,個人を対象とした質的分析を行う。質的分析による不安発生状況及び対処・結果の了解的連想から,両者の異なる不安維持プロセスの体系化を行い,介入プログラム策定に順次反映させることを目的とする。一般青年10名程度を対象とし,連想刺激には「不安を感じる場面での認知・行動・身体反応・感情の状態」,「不安を感じた場面での対処方法・結果」の2つを用い,各項目間の類似度評定から分析を行う。 また2つめは,簡易版としての不安に対する統制的・受容的介入プログラムの策定である。具体的には,不安に対する統制的介入と受容的介入の2つのプログラム策定を行うことである。統制的介入は,認知行動療法を参考に認知再構成・現実暴露を骨子とする内容となる。また受容的介入は,森田療法を参考に完全主義の上手な活かし方・目的本位・恐怖突入を骨子とする内容である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が進捗したため,次年度使用額が生じている。今後の研究成果がより充実したものになるよう,これらを効果的に生かしてゆきたい。まず,質的分析にかかる統計的な分析ソフトの購入が必要となり,介入法の策定のためには多くの関連書籍の購入が必須となる。また,研究結果を随時公開してゆくためには旅費を使用することも必要となる上に,研究の進捗を早めるための謝金も適宜使用してゆくことが求められる。
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