2013 Fiscal Year Research-status Report
社会恐怖と対人恐怖の相違に対応した不安維持プロセスの解明と介入法の研究
Project/Area Number |
23730652
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
清水 健司 信州大学, 人文学部, 准教授 (60508282)
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Keywords | 対人恐怖 / 社交不安障害 / とらわれ / 自己愛 / 森田療法 / 認知行動療法 / 強迫傾向 / 完全主義 |
Research Abstract |
社会恐怖と対人恐怖は,恥の病理として一括りにされてきたが,近年では前者が回避的防衛,後者が強迫的防衛を持つという重要な相違が指摘されている。防衛の相違は,不安の維持プロセスや介入法選択にも影響を及ぼすため,これに対応できる新たな実証研究が早急に求められる。 そこで本研究は,社会恐怖と対人恐怖のアナログ類型が抽出可能な実証モデルを援用し,各々で異なる不安維持プロセスの要因解明,当該の統合的知見を踏まえ,各々に有効な介入プログラムの策定および介入効果の検証を行う。 当該年度における課題は,PAC分析による個人別不安態度構造の検討と実証知見との統合的整理であった。具体的には,これまでの調査研究もしくは実験的研究による社会恐怖と対人恐怖の比較知見を踏まえ,個人を対象とした質的分析を行うことであった。手法としては,PAC分析による不安発生状況及び対処・結果の了解的連想から,両者の異なる不安維持プロセスの体系化を行い,介入プログラム策定に順次反映させることを目的としていた。分析対象となったのは、一般青年(各類型において数名)である。連想刺激には,「不安を感じる場面での認知・行動・身体反応・感情の状態」,「不安を感じた場面での対処方法・結果」の2つを用い,各項目間の類似度評定から分析を行った。 特に,誇大-過敏特性両向型(対人恐怖を想定したタイプ)と過敏特性優位型(社会恐怖を想定したタイプ)における不安発生状況と対処行動の差異に焦点を当て,これまでの実証知見との整合性を併せて検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目において取得された調査データは発表段階まで進んでおり,2年目の実験データは既に分析済みである。そして,今年度の質的分析に関しては,解釈においてまとまりを欠いている部分はあるが,順調にデータが取得されている点を考えると,進展に問題はないと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策としては,社会恐怖と対人恐怖のアナログ群を対象とした各介入法の有効性に関する検証となる。 まず,不安の維持プロセスが異なる社会恐怖と対人恐怖には,各々統制的介入(認知行動療法)と受容的介入(森田療法)が有効であると考えられる。特に,強迫的防衛を持つ対人恐怖にて,統制的介入が功を奏さない現象に注目する。方法としては,過敏特性優位型10名(社会恐怖),誇大-過敏特性両向型10名(対人恐怖),中間型10名を1ユニットとして3つ準備する。そして,各ユニットを統制的介入群,受容的介入群,介入なし群に割り当て,3時点にて社会恐怖尺度,抑うつ,STAI等の効果判定変数を測定する。 これは,介入法(統制的・受容的・介入なし)×類型(社会恐怖・対人恐怖・中間型)の2要因(3×3)実験参加者間計画である。特に,「統制×社会恐怖」と「受容×対人恐怖」が不安低減を示し,「統制×対人恐怖」では抑制の逆説的効果が生じるため,低減を示さないことに着目する。また,比較検討のため,心身の安定性が示唆されている中間型を含め,いずれの介入法・時点でも一貫して低不安が維持されることを確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画で見込んでいたよりも安価に研究が進捗したため,次年度使用額が生じたものである。今後の研究活動がより十分なものになるよう,計画的に使用する予定である。 平成26年度は,国内および海外での研究成果の発表も予定しているため,相当の旅費計上が見込まれている。また,研究成果を論文としてまとめるためにも,相当量の書籍の購入も必要になると考えられる。平成26年度が最終年度であることを踏まえて,効果的に使用してゆく予定である。
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