2011 Fiscal Year Research-status Report
日本におけるロールシャッハ法の輸入過程と発展過程の検討
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23730653
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
佐渡 忠洋 岐阜大学, 保健管理センター, 助教 (60510576)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ロールシャッハ法 / 輸入家庭 / 発展過程 / 文献研究 / スコアリング・システム / 図版作成 / 日本文化 / 心理学史 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ロールシャッハ法が日本にどのように輸入され(輸入過程)、日本でどのように発展してきたか(発展過程)を検討することである。この試みによって、日本の臨床心理学史を一部を明確にするとともに、今後のロールシャッハ法の発展を支える歴史的根拠を示し、批判も多い中で今なお臨床場面で魅力を発揮し続けるロールシャッハ法の日本における意義を考察したい。本年度は文献研究に力を注いだ。1)1969年までの邦文献を可能な限り収集し、1959年までの273編をリスト化した。このリストは『岐阜大学カリキュラム開発研究』に投稿中であり、刊行後はインターネット上でpdfを誰でも閲覧・取得できるため、臨床家と研究者に役立つ情報になると考えられる。 2)上記の273編を3つの視点(報告数、研究内容、研究者の特徴)から検討し、日本のロールシャッハ法黎明期の研究特徴を明らかにした。これも『岐阜大学カリキュラム開発研究』に投稿中である。 3)日本にロールシャッハ法を輸入した内田勇三郎と岡田強の研究特徴を検討し、如何にしてロールシャッハ法と出会ったか、ロールシャッハ法の輸入にどのような配慮を行ったか、について諸文献から検討を行っている。 4)研究を進めるにつれ、わが国独自のインクブロット図版はいくつか制作されていたことを知った。これも日本のロールシャッハ法史において重要な点であると考え、さらに調査や分析を進めているところである。 5)また、XX International Congress of the Rorschach and Projective Methodsに参加して口頭発表を行うとともに、諸外国における最近の動向も把握するようにした。以上のように、本年度は特に「輸入過程」の検討を行った。逸史を報告できる資料も得ることができたので、来年度は調査を継続するとともに、順次成果を発表していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
十分な成果は出ているものの、フィールドワークを今年は行うことができなかった。それは、1)苦し日本大震災による日常業務の複雑化、2)日常業務のそもそもの増加、がある。この点に関しては、平成24年度では改善可能であるので問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、日本のロールシャッハ法の研究者について、個別に検討を進めていく。そのためには、各研究者の出生地を訪ねるなど、フィールドワークを行う必要があり、個人資料の収集をより積極的に行う必要があると考えられる。ロールシャッハ法を創案したヘルマン・ロールシャッハについての研究も行う予定である。日本では彼の情報は、文字としてしか紹介されていない。そこで実際にスイスを訪れ、彼の資料を直接調査し、創案者の原資料から新しい情報を日本に報告しようと考えている。また、彼の論文が数編邦訳されていない。それもドイツ語原著から邦訳し、日本に紹介する予定でいる。以上のように、平成23年度は「輸入過程」の検討を行えたので、平成24年度は「発展過程」の検討を行いつつ、ロールシャッハ自身の資料もそれらの検討に加える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、ロンドンとスイスに調査に行く予定でいる。それは、ヘルマン・ロールシャッハに影響を与えたフロイトとの関係を調査するため(ロンドン)、ロールシャッハのさまざまな原資料をあたり彼の思想をよりよく理解するため(スイス)、である。これはわが国に十分紹介されていないロールシャッハの人間像を報告するために行う重要な調査である。その旅費(400千円)を計上した。そのほかに、調査の通訳と、「発展過程」を検討していく上で行う文献分類のための人件費(190千円)、調査と検討に必要な消耗品費(100千円)とその他(110千円)も合わせて計上した。
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Research Products
(1 results)