2011 Fiscal Year Research-status Report
日本語と中国語の二言語併用者における言語間の干渉を低減する脳基盤の解明
Project/Area Number |
23730700
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大井 京 名古屋大学, 情報科学研究科, 研究員 (70579763)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 国際情報交流 / 中国 / 台湾 |
Research Abstract |
本研究の平成23年度における目標は,日本語あるいは中国語を母語とする単言語使用者と二言語併用者を対象として,日本語と中国語に共通に実在する漢字2字熟語(日中同形語)の意味(語釈)に対する親しみやすさの程度(親密度)を調査し,この調査結果を利用して,語釈親密度の基準表を作成することであった。そこで,申請者は,当該年度において,まず,語釈親密度の調査を実施する準備として,日本語と中国語の同形語1,302語とその語釈項目4,033項目に対する整理を,中国語と日本語の二言語併用者の複数名の協力を得て行った。 さらに,日本,中国,台湾において,語釈親密度の調査を実施する準備として,次のことを実施した。語釈親密度の調査を実施する際と,その後のデータ処理における簡便性と迅速性をはかるために,web上で語釈親密度の調査を実施するアンケートシステムを構築した。具体的には,登録した調査参加者に対して,web上に掲載した質問紙に回答を求め,その回答を集計するシステムの構築を行った。語釈親密度の調査が日本国内だけでなく,中国と台湾の国外で実施されることと,調査対象者が,200名以上であるために,web上のシステムを利用することによって,調査の簡便性とデータ処理の迅速性が期待される。 この調査によって作成した親密度の基準表を,言語処理を対象とする研究者だけでなく,中国語または日本語の学習者に対して有用な資料として広く公開する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の本年度における目標は,日中同形語の語釈に対する親密度の評定調査を実施し,日中同形語の語釈に関する親密度の基準表を作成することである。現在,調査は進行中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では,今後,日本語あるいは中国語を母語とする単言語使用者と二言語併用者に,日本語または中国語での運用条件を指定して,日中同形語と語釈の対応関係を知っているか否かの判断を求める課題(語釈判断課題)を実施する予定である。 この語釈判断課題では,語釈親密度の基準表を用いて,語釈の親密度を統制する。語釈判断課題では,実験参加者が課題を遂行する際の脳活動を,近赤外分光法(Near-infrared spectroscopy: NIRS)によって計測する。 本研究の最終的な目標は,この実験によって計測された脳活動を分析し,二言語併用者の言語処理過程において言語間の干渉を低減することに関与する脳神経基盤を解明することである。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度における研究費の主たる使用目的は,近赤外分光法(Near-infrared spectroscopy: NIRS)実験を遂行する際に必要となる全脳型NIRS装置(FOIRE-3000/16,島津製作所)のレンタル費と,実験協力者に支払う謝金である。 また,語釈親密度の調査と基準表の整備のための経費が必要である。 これらに加えて,研究成果を発表するために,国際学会への参加費と,学術論文の国際誌の掲載費用等が必要となる。
|