2012 Fiscal Year Research-status Report
加齢にともなう衝動性の抑制と共感性の変化に関する実験的研究
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23730711
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
川合 南海子(久保南海子) 愛知淑徳大学, 心理学部, 准教授 (20379019)
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Keywords | 高齢者 / 抑制 |
Research Abstract |
加齢にともなう衝動性の抑制と共感性の変化について検討するために、本年度は、フランカー課題とサイモン課題を用いて検討した。抑制機能はワーキングメモリと並んで高次認知処理システムを構成しており、日常生活のさまざまな行為や認知に深く関わっている。高齢者の抑制機能は広範囲に研究されてきたが一様に低下するわけではない。たとえばストループ課題やサイモン課題では加齢にともない反応時間が長くなり、誤反応も増加するが、go/no-go課題やフランカー課題では若齢者と差異は認められない。Kubo-Kawai & Kawai (2010)は同じサイモン課題であっても、go/no-go課題を組み合わされれば高齢者のサイモン効果は若齢者と差異は生じないことを示した。一方で、高齢者は抑制課題において若齢者と同じ程度の遂行を示すものの、脳の血流量は高齢者のほうが多いという報告もある。これらのことは、高齢者の脳では低下しつつある抑制機能を補償するかのように活性化することを示唆している。認知訓練(2重課題)により、高齢者の遂行は若齢者と同程度に改善し、その改善の程度は腹側と背側の前頭前野の活動レベルの年齢差と負の相関があった。すなわち、認知訓練により高齢者の前頭前野の活性化は抑制されるとともに遂行は上昇した。このことは前頭前野が認知の抑制に重要な役割を担うことと、高齢者においても脳の可塑性があることを示している。本研究では、加齢による影響を受けないとされる抑制課題(フランカー課題)と、影響を受けやすい抑制課題(サイモン課題)を同じ被験者に課し、課題遂行中の脳血流反応を調べた。抑制課題の遂行と脳活動の関連を調べることを目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、高齢者と比較するための若年層のデータを収集・分析することができた。対象の人数としても十分である。また、高齢者を対象に、今後、高齢者の脳機能の計測をするための準備としても十分なシステムについて検討するための予備的な実験をおこない、順調に稼働している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き高齢者のデータを収集・分析することに加えて,脳機能の計測をおこなっていく予定である。機器を購入して環境を整備するとともに、高齢者を対象とした場合の特有の問題にも留意して、質のよい生理的データを収集・分析することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、高齢者の脳機能計測の使用に最適な生体アンプ等を検討するために、既存の計測機器を用いてデータの収集を重点的におこなった。次年度は、本年度から繰り越した研究費と合わせて、高齢者を対象にしても負担の少ない生体アンプ基本システムおよび計測用アンプを購入して、課題遂行時の生理的データを収集・分析する。
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Research Products
(2 results)