2013 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア帝国ムスリム地域におけるジャディード運動:教育改革・地方自治・ネットワーク
Project/Area Number |
23730766
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
渡辺 賢一郎 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (30328637)
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Keywords | ロシア史 / タタール史 / イスラーム史 / 共生 / 自治 / 教育改革 |
Research Abstract |
本年度は本研究計画の最終年度である。したがって、最後の文献調査を国内外とわずおこなった。海外調査は、ウクライナ、ポーランドの国立図書館等の調査を行った。リヴィウを含む東ガリツィア地方はポーランド領であったが、18世紀末のポーランド分割でオーストリア領となり20世紀にロシア帝国領、西ウクライナ人民共和国領、ポーランド領を経て、ソ連構成共和国のウクライナ共和国領となった場所である。こうした歴史的経緯から多民族・多言語社会が形成されタタール人をはじめとするムスリムもまた多く居住していた。本研究計画の課題であるロシア帝国におけるムスリムによる教育改革運動と地方自治の実践に関して、クラクフもまたリヴィウと同様、支配国家の変遷がある町であり、ユダヤをはじめとした多くの被支配民族が居住していた。このため、多民族・多言語共生の実験モデルとして、教育運動や地方自治運動がおこなわれたのである。ムスリムについて、定期刊行物、教科書、行政資料などを閲覧・複写した。最後にワルシャワのポーランド国立図書館において調査を開始した。ワルシャワもまた、上記二都市と同様、その支配国家の変遷を経験した都市であり、かつまたユダヤ、タタール、バルト諸民族などの多民族・多言語社会を形成した都市でもある。このため、その国立図書館はこの地域一帯の民族運動や地方自治関連の史料を多数所蔵している。本研究計画の課題に関するタタール人は、ユーラシア大陸に広く分散居住しており、これらのコミュニティは、東は中国の新疆から西はポーランドやバルカン半島に至るまで広がり、ネットワークで結ばれていた。このネットワークのもと、人的物的な影響を受けながら、ポーランドにおいてどのような教育改革運動が展開されたのか、日本国内調査や二次文献よりいくらかは知りえていたが、現地史料にあたることにより、その具体的な事例をふくめ、裏付けをとることができた。
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Research Products
(3 results)