2013 Fiscal Year Research-status Report
発達障害をめぐる教育実践の相互行為研究:社会構成論の教育学的貢献の可能性
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23730810
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Research Institution | Teisei Gakuen Junior College |
Principal Investigator |
鶴田 真紀 貞静学園短期大学, その他部局等, 講師 (60554269)
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Keywords | 教育社会学 / 発達障害 / 特別支援教育 / 学校的社会化 / 相互行為 / 授業 / 質的調査 / 映像データ |
Research Abstract |
平成25年度は8月より研究を再開し研究期間は短期間であったが(研究代表者の産前産後休暇および育児休業による研究中断期間:平成24年5月7日~平成25年7月31日)、研究実施計画に基づき研究を進展させた。 まず、理論的研究に関しては、社会構成主義およびエスノメソドロジーの観点から障害児教育を検討するために、関連文献の読解を進めた。同時に、発達障害を有する児童生徒に対する教育の今日的状況を医療化論の観点から分析するために関連する主要文献の読解を進め、「社会的視点」から<発達障害と教育>を捉えるための理論的な整理を行った。 実証的研究に関しては、これまで着目してきた「学校的社会化」という観点から、通常学級に在籍する発達障害児をめぐる教室内の相互行為を検討した。具体的には、発達障害児をめぐる児童間および教師-児童間の相互行為がどのようにして非対称性をおびていくのかを「笑い」の発生に着目し分析した。 また、関東圏内の公立小学校においてフィールドワークを実施し、授業場面の映像データの収集を補足的に行った。今回の調査は、研究代表者が過去にフィールドに入っていた小学校であるため、同一児童の成長過程に伴う「追跡調査」としての意味を有するものであった。 以上から蓄積された研究成果は、それぞれ論文化および学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、理論的研究および実証的研究の双方を均衡のとれた形で進展させることができた。 理論的研究に関しては、方法論に関連する主要文献の読解に取り組むとともに医療化論に関する理論研究を進めることによって、特別支援教育を探究するために本研究にとって不可欠な視点を習得することができた。そして、その成果の一部を論文としてまとめることができた。 実証的研究に関しては、「通常学級における発達障害児をめぐる相互行為」という本研究にとって重要な場面の分析に着手し学会発表を行うことで、今後の実証的研究の方向性を明確化することができた。同時に、フィールド調査を再開したことで、本研究にとって不足していた視点を補足することができた。 以上から現在までの達成度としておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
理論的研究に関しては、(1)継続して社会構成主義およびエスノメソドロジーの主要文献の読解を進めることで方法論的視点の充実を目指すともに、(2)障害学の観点から教育を論じた文献の読解をはじめとして障害という内容に特化した理論的研究を行っていく予定である。 実証的研究に関しては、これまで蓄積してきた映像のデータベース化を行い、さらなる実証研究の論文化に励むとともに、より「発達障害の相互行為的達成」に接近した研究を産出していきたい。そのため、新たな調査を予定している(調査参加者の合意を得ることができ、間もなく調査が開始できる見込みである)。 理論的研究および実証的研究ともに、これまでの研究成果を学位論文としてまとめるべく、具体的に執筆を進めていく予定である。その過程で、教育社会学を専門とする研究者による研究会等に精力的に参加し、中間発表を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は平成24年5月から平成25年7月にかけて中断の手続きをとり、その分研究期間の延長を申請し承認されている(したがって、平成27年度が最終年度となる)。それに伴い研究計画を変更したためである。 次年度は、(1)理論的研究および実証的研究の研究成果をまとめる作業として、学位論文の執筆を行う予定であり、未使用額はそのために必要な書籍購入等の経費に宛てる予定である。また、(2)研究中断期間に行う予定であった調査を、次年度に実施する予定である。この調査はかなり大規模に行う予定であり、調査協力を研究代表者と専門を同じくする複数の研究者に依頼する予定である。未使用額は人件費等も含めその経費に充てることにしたい。
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