2011 Fiscal Year Research-status Report

音楽表現力を育むための総合的アプローチに関する実践的研究　スイスの教育からの示唆

Research Project

Project/Area Number	23730839
Research Institution	Kagoshima University
Principal Investigator	今由佳里鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (40440838)
Project Period (FY)	2011-04-28 – 2013-03-31
Keywords	表現 / 音楽科教育 / スイス・フランス語圏 / 小学校
Research Abstract	研究初年度にあたる本年度は、スイス・ジュネーヴ州の小学校における音楽科授業に関する現状の把握と教育実践資料の収集について、１）ジュネーヴ州の小学校音楽科専科教員からの資料収集と分析、２）ジュネーヴ州の公立小学校に通う子どもたちへのインタビュー調査、を中心に行った。本年度行った研究活動と研究成果は以下のとおりである。　１点目に関しては、ジュネーヴ州の小学校音楽専科教員より得た教材や指導案などの資料を整理・分析を行った。スイスの学校教育は、学習の到達目標は定まっているものの、そこに到る方法や道筋は各教員に任されているのが現状である。ジュネーヴは、リトミックの創始者であるジャック・ダルクローズが教鞭を執った地であるため、伝統的にリトミック教育が盛んであり、リトミックを学んだ背景を持つ音楽教員が多い。そのことは、学校音楽教育にも反映されており、教員の多くが音楽の授業にリトミックの要素を含んだ身体の動きを取り入れていることがわかった。　２点目に関しては、ジュネーヴ州の公立小学校に通う児童に、音楽科の授業の実態についてインタビュー調査を行い、その現状把握に努めた。インタビューから、音楽の授業は歌を歌ったり楽器を演奏したりするだけではなく、音楽にあわせてダンスする、映画音楽にあわせて身体を動かす、音楽にあわせて字を書く、パントマイムする、四角い布やロープを音楽の流れにあわせて揺らしたり形をつくったりするなど、多様な活動が展開されていることが明らかになり、総合的な視点から学習が行われていることが確認できた。　なお、本年度の成果の発表として、日本音楽教育学会第42回大会において「スイス・フランス語圏の学校音楽教育　その１　－聴取能力と評論の精神の育成に着目して－」の口頭発表を行った。さらに次年度7月には、ギリシャで行われるISME世界大会で成果を発表する予定である。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 教育実践資料を収集するための現地調査は、当初の計画では初年度に行う予定であったが、本研究開始直前の2011年2月にスイス調査を行ったばかりであったため、本年度はこの2月に収集した資料を基に現状の把握・資料の分析を行った。より高い研究の成果を得るためにスイスでの現地調査を一年後に延長し、次年度に持ち越した。
Strategy for Future Research Activity	次年度は、６月にスイスでの現地調査を行い、さらに多くの実践例の収集に励む予定である。さらにその結果を踏まえて、総合的アプローチによる音楽表現学習に関する有効な指導法と指導プログラムを開発する。その予備的研究として、総合的アプローチによる音楽表現学習について、現職小学校教員及び大学生に試行的に実施し、音楽的・教育的効果についてアンケート調査を実施することから着手していく。
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding	次年度の研究費の大半は、スイスでの現地調査における旅費及び調査費に充当する予定である。前述しているとおり、当初の計画では本年度教育実践資料を収集するための現地調査を行う予定であったが、本研究開始直前の2011年2月にスイス調査を行ったばかりであったため、本年度はこの2月に収集した資料を基に現状の把握・資料の分析を行い、スイスでの現地調査を次年度に持ち越した。そのために、本年度は未使用研究費が生じることとなった。なお、この未使用研究費は次年度の現地調査に充当し、より質の高い研究成果をあげていきたいと思う。　研究最終年度にあたる次年度は、本研究の成果を還元するため、学会で発表を行い、論文にまとめていきたい。