2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740024
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高木 俊輔 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (40380670)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 代数幾何学 / 可換環論 / 特異点 / ファノ多様体 |
Research Abstract |
今年度は大域的F正則型多様体と対数的ファノ多様体の関係について研究した.大域的F正則性とは,フロベニウス射の分解を用いて,正標数の正規射影多様体に対して定義される概念である.標数0の正規射影多様体Xは,ほとんど全ての素数pに関して標数pへの還元X_pが大域的F正則多様体になるとき,大域的F正則型であると言う.一方,-(K_X+D)が豊富で対(X, D)がkltとなるような有効Q因子Dが存在するとき,Xは対数的ファノ多様体と言う.Karl SchwedeとKaren Smithは,標数0の対数的ファノ多様体は大域的F正則型であることを証明し,逆も正しいだろうと予想した.それを受けて,權業善範,大川新之介,三内顕義との共同研究において我々は,森夢空間の場合にSchwede-Smithの予想を肯定的に解決した.つまり,大域的F正則型の森夢空間は対数的ファノ多様体になることを証明した.またこの結果の系として,対数的ファノ多様体のCox環の性質による特徴付けを得た.Morgan Brownは,Q分解的対数的ファノ多様体のCox環は高々端末特異点しか持たないことを示した.それに対し,上の結果の系として我々は,Q分解的正規複素射影多様体Xが対数的ファノ多様体であることと,Xは森夢空間でXのCox環が高々端末特異点しか持たないことが同値であると証明した.我々の証明は正標数の手法を用いていおり,Brownの議論とは全く異なるものである.またYi HuとSean Keelは,Xがトーリック多様体であることとXのCox環が多項式環になることが同値であると示したが,我々の結果はこの結果の類似(一般化)と見なせる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では3年かけて,Schwede-Smithの予想である「F正則多様体と対数的ファノ多様体の対応」を証明する予定であったが,1年目にして森夢空間の場合に対応を得ることができた.これは予想以上の進展である.今後は森夢空間の仮定を外した場合について研究を行う.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は森夢空間の場合に「F正則多様体と対数的ファノ多様体の対応」を証明したが,次年度以降は森夢空間の仮定を外した場合について考察する.森夢空間の場合の考察から,対応を証明するためにはある種の有限性が必要になるように思われるため,一般には反例がある可能性もある.そのため,必ず成り立つ対応だと妄信せず,反例を探す試みも行う.また大域的F正則多様体上のコホモロジーの消滅定理という,「研究の目的」に記載したもう1つの問題についても次年度以降取り組む.差し当たっては,トーリック多様体の消滅定理の証明をフロベニウス射の分裂を用いて翻訳するところから始める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は年度途中に九州大学から東京大学に異動し,研究室の引越等に時間をとられたため,コンピュータを購入することが出来なかった(コンピュータを整備する時間が確保できそうになかったので).次年度は出張中に作業が可能なノート型パソコンを購入し,学術論文の執筆やインターネットによる情報収集のために用いる.それから今年度得られた結果を国内外の研究集会で発表するための旅費を計上する.また更なる一般化について国内外の専門家と研究討論・議論するためにも旅費が必要になる.研究に必要な知識を得るための文献購入費用も計上する.
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Research Products
(6 results)