2012 Fiscal Year Research-status Report
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23740024
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高木 俊輔 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (40380670)
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Keywords | 代数幾何学 / 可換環論 / F純特異点 / 対数的標準特異点 |
Research Abstract |
本年度は、前年度の研究の続きとして、F純対と対数的標準対の対応について研究した。原-渡辺は、正標数の完全体上定義された正規代数多様体Xとその上の有効Q因子Dの対(X,D)に対して、F純性の概念を定義した。そして、標数0の対数的標準対(X,D)が与えられたとき、その標数pへの還元がF純になるpが無限個存在すると予想した。この原-渡辺の予想は、Xが2次元でDが被約、もしくはXが3次元孤立特異点でD=0の場合には正しいと知られているが、一般には未解決であり、F特異点に関する最も重要な予想の1つと考えられている。 今年度は原-渡辺のF純性の定義をDが有効とは限らない場合に拡張し、この定義を用いて、Mustata-Srinivasの予想が正しければ、原-渡辺の予想も正しいことを証明した。ここで言うMustata-Srinivasの予想とは、標数0の代数閉体上定義されたd次元非特異射影代数多様体Vが与えられたとき、Vの標数pへの還元のコホモロジー加群へのフロベニウス作用が全単射になるpが無限個存在する、というものである。F純対と対数的標準対の対応だけでなく、他のF特異点と極小モデル理論に現れる特異点の対応も、このMustata-Srinivas予想から従う。Mustata-Srinivas予想はVが曲線の場合にすら未解決であるが、通常素数の密度という観点から見ると、自然な予想であり、成り立つことが期待されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Schwede-Smithの予想である、F正則型多様体と対数的ファノ多様体の対応を(部分的にでも)証明する計画であったが、1年目にして森夢空間の場合に対応を得ることができた。今年度は、類似の予想である、F分裂型多様体と対数的カラビヤウ多様体の対応について考察し、特にその局所版である、F純対と対数的標準対の対応について部分的な結果を得た。今後はF正則型多様体と対数的ファノ多様体の対応とF分裂型多様体と対数的カラビヤウ多様体の対応について、森夢空間の仮定を外した場合について研究を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
権業善範、大川新之介、三内顕義との共同研究において、森夢空間の場合に大域的F正則型多様体と対数的ファノ多様体の対応が得られたので、今後は森夢空間の仮定を緩めることを考える。1次元の大域的F正則型多様体は有理曲線に他ならないので、差し当たり2次元の場合を考える。2次元の大域的F正則型多様体は森夢空間かどうかわからないが、標数pに還元すると森夢空間になることが分かっている。有理曲面の理論を適用することを試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
MSRIにて開催されている可換環論の長期プログラムに参加するための旅費を計上する。また今まで得られた結果を国内外の研究集会で発表するために旅費を計上する。海外のF特異点の専門家を日本に招聘し、研究討論を行うためにも旅費が必要になる。今年度は出張の機会が増えるため、出張中に作業が可能なノート型パソコンを購入し、学術論文の執筆やインターネットによる情報収集のために用いる。
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Research Products
(7 results)