2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740025
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
服部 新 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 助教 (10451436)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ガロア表現 / クリスタリン表現 / 合同 |
Research Abstract |
本研究の目的はp進クリスタリン表現に存在する種々の合同関係の構造の解明である。本研究では次の三種類の合同関係を取り扱う。(1) 局所体のp進クリスタリン表現の合同 (2) 局所体のp進クリスタリン表現に含まれるZ_p格子の合同 (3) 異なる標数を持つ局所体のp進クリスタリン表現の間の合同(分岐対応の理論)。本年度は主に(1)(3)について研究を行った。(1)について述べる。(1)に関する研究の目的は、p進クリスタリン表現(に伴う半単純法p表現)の従順分岐レベルの合同関係を解明することである。本年度は、研究実施計画に基づき、局所体のクンマーZ_p拡大の絶対ガロア群について、そのp進表現のp進族を構成する研究を行った。(3)について述べる。(3)に関する研究の目的は、以前の研究で証明した有限平坦表現の分岐対応定理を剰余体非完全のp進体に拡張することである。そのための当初のアイデアは、p進体の整数環上の有限平坦群スキームの定義方程式を、クリスタリン・デュドネ加群を用いて書き下すことだった。しかし、本年度の研究により、群スキームがユニポテントな場合には、別の容易な道筋を発見できた。これにより、従来の手法ではカバーできなかった剰余体完全な2進体についても、ユニポテントな群スキームに関する分岐対応定理を証明できた。応用上はユニポテントな場合だけ考えれば十分であり、(以前より従来の分岐対応定理を用いてp=2の場合を除いては証明できていた)アーベル多様体の標準部分群の過収束性定理も、p=2の場合に一般化できた。これらの成果については論文を作成しプレプリントとして発表済みであり、現在投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に述べた(3):分岐対応に関する研究、に関しては、「クリスタリン・デュドネ加群から群スキームの定義方程式を求める」という困難なステップを回避する道筋が発見できたという進展があり、これによって以前に得られていた結果を一般化し、証明も簡略化することができた。一方で、(1):局所体のp進クリスタリン表現の合同の研究、に関しては、先行研究で用いられている技術の習得に時間がかかったため研究の着手が遅れたことと、(フィルター付きフロベニウス加群に対応する)べき級数環上のフロベニウス加群を求めるステップに困難があり、その困難を年度中に解決できなかったことで、交付申請書で述べた研究計画からは遅れている。これらを考慮して、総合的には当初の研究計画からやや遅れていると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは本年度に引き続いて、局所体のp進クリスタリン表現についての、従順分岐レベルの合同関係についての研究を行う。当初の研究実施計画ではこれを初年度に行うとしていたが、研究計画を変更して二年度目も研究を継続する。この研究ではp進表現のp進族の存在が鍵となる。p進族の構成のためには、p進クリスタリン表現に伴うフィルター付きフロベニウス加群を与えたとき、それに対応する(べき級数環W[[u]]上の)フィルター付きフロベニウス加群を求める必要がある。本年度はこれを、まずは(Bergerの先行研究にある手法に基づいて)逐次近似で求めようとしていた。しかし、Bergerの先行研究ではガロア群の円分方向だけ調べれば十分であるのに対し、従順分岐レベルを調べるためには、円分方向とクンマー方向の両方の寄与を考察する必要がある。そのため、逐次近似の一般化は非自明な問題であることが分かってきた。次年度は逐次近似に加えて、階数1の拡大の中から求めるフロベニウス加群を探す手法や、(φ,Γ)加群との関係を記述する手法も検討する。さらに、局所体が絶対不分岐な場合に限れば、Bergerがp進族を構成しているので、これを利用した研究も行う。その後は研究実施計画の通り、p進クリスタリン表現に含まれるZ_p格子の合同の研究に移る。この研究は主にLiu加群のp進族を構成することで行うが、近年の保型ガロア表現に関する技術の進歩を勘案して、大域的な手法も検討する。また、分岐対応定理の一般化に関する研究も引き続き行う。これに関しては、本年度の研究で採用した手法の適用を試みるとともに、係数拡大によって剰余体完全の場合に帰着する手法も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は研究計画の中心部分であり、その諸段階で海外・国内における他研究者との研究討論や情報収集を必要とする。そのため、欧米を中心とした海外・国内出張をそれぞれ二度ほど行い、本年度よりも多くの研究者との討論・情報収集を計画している。また、本年度の研究の結果、次年度使用額が生じた。これは、本年度に行った海外出張の旅費に、当初の見込みより高額だったものがあり、まとまった出張旅費に使うには中途半端な額が残ってしまったためである。この分を合わせて次年度の出張旅費とする。また、リジッド解析幾何、族のp進ホッジ理論等に関する、研究計画に必要な図書を随時購入する。
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