2012 Fiscal Year Research-status Report
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23740025
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
服部 新 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 助教 (10451436)
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Keywords | ガロア表現 / クリスタリン表現 / 合同 / 分岐 |
Research Abstract |
本研究の目的はp進クリスタリン表現に存在する種々の合同関係の構造の解明である。本研究では次の三種類の合同関係を取り扱う。(1) 局所体のp進クリスタリン表現の合同 (2) 局所体のp進クリスタリン表現に含まれるZ_p格子の合同 (3) 異なる標数を持つ局所体のp進クリスタリン表現の間の合同(分岐対応の理論)。本年度も前年度に引き続き、主に(1)(3)について研究を行った。 (1)について述べる。(1)に関する研究の目的は、p進クリスタリン表現(に伴う半単純法p表現)の従順分岐レベルの合同関係を解明す ることである。本年度は、Colmezの方法に基づき、基礎体が絶対不分岐な場合に、階数2のp進クリスタリン表現に伴う単位円盤上のフロベニウス加群を分類した。この結果により、族の構成や法p還元の構成など、合同関係解明のための次のステップに進むことができる。 (3)について述べる。(3)に関する研究の目的は、以前の研究で証明した有限平坦表現の分岐対応定理を剰余体非完全のp進体に拡張することである。そのために本年度は、前年度までの研究で条件付きの結果を得ていた分岐対応定理について、そのより一般の場合に成立する明快な証明を模索した。その結果、分岐対応定理を(p=2や表現がpで消えないときなどの、これまで困難だった)新しい場合に大幅に拡張して証明できた。さらに、この拡張版の分岐対応定理の応用として、アーベル多様体の標準部分群の過収束性も大幅に改良できた。これらの結果を論文にまとめて学術誌に投稿した(査読中)。 さらに、分岐対応定理の類似として、標数の異なる完備離散付値体でも法p還元が同型であればある範囲の分岐が対応する、という定理を証明できた。この定理には、(困難な)混標数の分岐理論を(より容易な)等標数の分岐理論に帰着できるという意義がある。これについては現在、研究成果を論文にまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要欄に述べた(3):分岐対応に関する研究、に関しては、有限平坦表現の分岐対応の一般形や、その完備離散付値体における類似、アーベル多様体の標準部分群への応用など、本年度において大きな進展があり、当初の研究計画で目標としていたことよりもずっと有意義な成果が得られている。 一方で(1):局所体のp進クリスタリン表現の合同、に関してはようやく研究計画の半分程度まで到達したところであり、大幅に遅れている。これはp進クリスタリン表現に伴うフィルター付きフロベニウス加群を具体的に求めることに予定より時間がかかったことによる。 これらを総合して、研究目的の達成度はやや遅れていると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続いて、次年度もp進クリスタリン表現(に伴う半単純法p表現)の従順分岐レベルの合同関係について研究を進める。前年度の研究で絶対不分岐な基礎体における階数2のクリスタリン表現に伴う単位円盤上のフロベニウス加群を計算した。次年度は、ここからもとのクリスタリン表現の従順分岐レベルを求める手法を構築し、合同関係を調べる。手法としては、当初の研究計画にあった族の構成を行う方法を試みる。また、研究計画で述べていたような、単位円盤上のフロベニウス加群からその整係数べき級数環上の格子を求めてその法p還元を計算する方法は困難が大きいことがわかってきた。その代わりとして、分岐理論的な手法を利用して、格子を経由しないで従順分岐レベルを求める手法を模索する。 その後は研究計画通り、p進クリスタリン表現のZ_p格子の合同について研究を行う。これについても、当初の計画で述べていたような整p進ホッジ理論的な手法には困難があることがわかってきたので、保型形式の合同を用いた大域的なアプローチを試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は海外に二度ほど、国内に一度、一週間程度の出張を予定しており、引き続き情報収集や研究討論、講演を行う。本年度の研究の結果、次年度使用額が28651円生じている。この分と合わせた研究費を、次年度の出張旅費および、p進解析幾何、p進解析などp進族を用いた合同関係の研究に必要な書籍の購入費として使用する。
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