2013 Fiscal Year Annual Research Report
正則化法による逆問題の高精度近似理論と次世代計算環境による数値的実現
Project/Area Number |
23740075
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤原 宏志 京都大学, 情報学研究科, 助教 (00362583)
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Keywords | 多倍長計算 / 正則化法 / 数値的不安定性 / 非適切問題 / 高精度シュミレーション |
Research Abstract |
本研究は、逆問題の数値計算などの数値的不安定性を有する問題に対し、高精度かつ信頼できる数値計算の枠組みを与えるものである。平成25年度は特に計算の信頼性と丸め誤差に対応する考察をおこない、偏微分方程式に対する数値的安定性の概念についての考察をおこない、数値計算の信頼性について新たな知見を得た。これは報告者の属する研究グループにおける成果である。 得られた結果を標語的に述べると「安定性条件のもとでの数値計算においても、丸め誤差の指数的に増大または零に減衰により数値計算は破綻し得る」というものである。数値解析学においては丸め誤差が急激に累積しない目安として安定性条件の研究が重要な概念の一つである。多くの場合、適当なノルムを設定することで離散化方程式の解が初期値に対して連続に依存する条件として与えられ、その条件の下での数値計算での丸め誤差は計算ステップ数に対して多項式程度の増大で、それにより計算は破綻しないと言われてきた。例えば差分法では熱方程式でのNeumann条件や一階双曲型方程式でのCourant-Friedrichs-Lewyの条件が基本概念として知られている。本研究成果として得られたのは、浮動小数点演算の標準規格IEEE754のもとで丸めの方向を制御し、これら安定性条件のもとで、正の無限大に指数的に発散する場合、0に指数的に減衰する例などの構成に成功した。また単に数値例を作るのみならず、その挙動に対して数学的証明を与えた。 これらの結果は「数値計算の信頼性をどのように考えるか?」という根本的な問いに対し、従来の安定性理論は密接な関連をもつものの、決定的な答とはなっていなかったことを示すものであり、報告者らた本研究においても推進した多倍長計算の有効性を示すものと考えている。
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Research Products
(8 results)