2011 Fiscal Year Research-status Report
統計力学的手法によるエノン写像の大域分岐問題の研究
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23740121
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 博樹 東京大学, 生産技術研究所, 民間等共同研究員 (00467440)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | エノン写像 / 分岐 / 熱力学形式 |
Research Abstract |
熱力学極限やGibbs測度、大偏差原理などの統計力学における手法、概念を駆使してエノン写像などのカオス的力学系の大域分岐の様子、すなわちパラメーターの変動に伴うダイナミクスの変化を詳しく調べている。このような研究の方向は、一様双曲系のようにマルコフ分割を許容する力学系についてはSinai, Ruelle, Bowen, Landordらによって1960年代から強力に押し進められ、美しい統一的な理論として結実した。しかし、エノン写像のようにマルコフ分割がない、あるいはあるかどうかわからないような場合には未だ一般論が存在せず、手探りの状況が続いている。本年度は本科研費を使用して米国ペンシルバニア州立大学に共同研究者のSamuel Senti氏(リオデジャネイロ連邦大学、ブラジル)を訪ね、エノン写像の最初の分岐パラメーターにおける自然な平衡状態の存在と一意性、及びその幾何的、統計的性質に関する共同研究を進めた。また、この成果を京都大学や北海道大学での研究集会で発表した。この一連の研究は二編の共著論文として既にほぼまとめられている。うち一つは既に投稿中であり、もう一つも間もなく投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに得られた研究成果を既に2本の論文にまとめており、いくつかの研究集会で発表も行っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
既に2本の論文にまとめた結果に基づき、エノン写像の大域分岐の様子への理解をさらに深めてゆく。具体的には大偏差原理の証明や、圧力関数、レート関数の解析性を調べ、また観測関数のレベル集合と不変確率測度のエントロピー、リャプノフ数を結びつけるマルチフラクタル解析を行う。このようなさらなる展開のために、Juan Rivera-Letelier氏(カトリック大学、チリ)や鄭容武氏(広島大学)などの国内外の関連分野の研究者を訪ね、積極的な意見交換を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の大半を、国内外の研究者を訪ねるための出張旅費にあてる。また、研究の遂行に必要な書籍やパソコンなども購入する。
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