2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740128
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
下條 昌彦 明治大学, 研究・知財戦略機構, ポストドクター (40588779)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 非線形熱方程式の爆発問題と多様体の幾何構造 / 多様体上の極小曲面と変分法 / 平均曲率流の自由境界値問題 / 複素藤田型方程式 |
Research Abstract |
非線形熱方程式や流体現象における爆発問題や幾何学的な平均曲率流方程式のさまざまな特異点を解析するための漸近的手法を研究した.(1) 藤田型方程式を複素化して得られる連立反応拡散系は流体力学で現れる粘性付きConstantin-Lax-Majda 方程式の解を一部に含んでおり流体現象と深い関わりがある.この問題について時間大域的な解がどのような場合に存在し,その漸近挙動はどうなっているのかについての結果を得た.また常微分方程式の解は解は一つの成分しか爆発し得ないにも関わらず,線形の拡散項を付けると「ほとんどすべての爆発解」が同時爆発を引き起こすことを証明した(1次元).ところが「どこで爆発点するのか?」は未解決であり,爆発点の近傍の漸近挙動も現在計算中である.この問題については二宮広和教授(明治大学),柳田英二教授(東京工業大学),Jong Shenq Guo教授(淡江大学)らと共同研究を行なった.論文はTransactions of the American Mathematical Society に投稿して受理された.(2) 東京大学の俣野博氏台湾のChang-Hong-Wu 氏(淡江大学)Jong Shenq Guo教授(淡江大学)らと曲線の移流項付き平均曲率流の自由境界値問題について研究している.解が一点に縮む場合と広がる場合とがあるが,それらについての初期値に対する判定条件を発見した.次に無限に界面が広がる場合の時間大域解の漸近挙動をスケーリングにより分類した.一方,界面が一点に収束する場合,適当なスケーリング極限を考えることで,ある種の自己相似解へ収束することを示した.この方程式は火事における火災前線の伝搬を記述するモデルとも解釈できる.界面が一点に収束するのは火事が広がらない状況,界面が広がるのは火事が広がる状況に対応する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では多様体や無限グラフ上の放物型方程式の解析学を展開するにあたって,ユークリッド空間の場合と本質的に異なる現象を探すのを目的としている.申請者は昨年その準備として微分幾何学やグラフ論,確率論などから多くの準備を要することに気がついたが,独力では効率よく体系だった知識を得ることができなかった.本年度からは北海道大学において利根川吉廣教授の下でその知識を集中的に習得できる環境を得た.現在は,多様体での解析学に必要な幾何的測度論や,(幾何的な問題として典型的な)調和写像の議論などをマスターしている.今年度は一気に計画を推し進めることができると思われる.申請者は昨年度,曲率流の自由境界値問題の方面に興味を持ち,その問題にも一心不乱に打ち込んだ.この曲率流の問題は,「多様体上に自由境界を持つ問題」という新たな問題を申請者に提示した.このような新しい問題も本研究課題の中に取り込みつつ,研究を発展させていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)北海道大学の利根川吉廣教授と極小部分多様体に関する研究を行う.多様体の上での特異摂動問題の極限としてを考えて,極小部分多様体をの存在と正則性を考察する.この方法は70年代から80年代のJon-Pittsらによる極小部分多様体の存在と正則性の議論について全く新しいアプローチを与えることになる.(2)最近の俣野博氏,Chang-Hong-Wu氏,Jong Shenq Guo教授らと共同研究において一次元直線の上で移流項が付いた平均曲率流の自由境界値問題を考察し,解の漸近挙動を分類した.本年度はこれらを曲線や多様体の上を自由境界が動くような問題として発展させる予定である.この拡張において,例えば,自由境界を拘束する多様体の幾何学的情報が解の漸近挙動をどのように制御するのかを考察する.この問題についてはChang-Hong-Wu氏やJong Shenq Guo氏などとも緊密に連絡を取り合いながら遂行する.(3)多様体の上での藤田型方程式の研究を継続して行い,多様体の幾何的な構造と典型的な臨界指数との関係を考察する.また,例えば多様体上での熱方程式についての専門家である石渡聡氏(山形大学)などを北海道大学で行われるPDEセミナーに招聘し,最近の研究の進展についての情報収集を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
直接経費:5th Euro-Japanese Workshop on Blow-up (9/10 -- 9/14) の参加旅費北海道大学PDEセミナーの講演者を招待するための費用日本数学界の学会に参加するための旅費Chang-Hong-Wu氏やJong Shenq Guo氏の滞在費など
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