2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740182
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
濱中 真志 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 助教 (70377977)
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Keywords | ソリトン / インスタントン / ADHM構成法 / 可積分系 / 非可換幾何 / Normal form / Quasideterminant |
Research Abstract |
研究実施計画に基づき,非可換空間上のソリトン・インスタントンの研究と可積分系・弦理論への応用について精力的に取り組んだ. まず,昨年度に引き続き,中津了勇氏(摂南大学)と共同で, 非可換空間におけるインスタントン解のAtiyah-Drinfeld-Hitchin-Manin (ADHM)構成法について詳しく調べた.ADHM構成法とは, 任意のインスタントン解を与える強力な構成法の一つであり, インスタントン・バックグラウンドでの経路積分の計算など様々な応用がある. この構成法を非可換空間の設定に拡張すると, モジュライ空間の特異点が解消され,種々の議論が自然に進み, U(1)インスタントンといった新しい物理的対象も生み出される. (ゲージ理論においては,非可換空間への拡張は背景フラックスの導入と理解できる.) 今年度は具体解の構成や解空間の対称性について詳しく調べた.逆構成の議論もほぼ仕上がり,まもなく投稿する予定である.これらの成果を昨年度の成果と合わせて,国内外の各大学のセミナーや研究会で発表し, 幅広い分野の専門家と質疑応答を行った. プロシーディング論文も2本仕上げることができ,学術雑誌に掲載された. また,非可換KdV方程式の可換側との対応に関して,児玉裕治(オハイオ州立大学)から重要なコメントをいただき,2013年3月に議論のため1週間訪問した.セミナー発表も行い,非可換ソリトン方程式のNormal formについて,さまざまな知見を得た. ラグランジアン形式での可積分系の定式化に向けて,無限次元リー環の表現論を学んだが,まだ結果は得られておらず来年度に継続する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
非可換空間におけるインスタントン解のADHM構成法の研究は,インスタントン・モジュライとADHMモジュライ空間との1対1対応を証明することを最終目標にしているが,今年度の成果により,ほぼ完成したと言ってよい.さらに解構成や解空間の対称性について詳細にわたり議論を重ね,国際会議での発表が実りあるものとなった.論文の内容にもおおむね満足している.また,非可換ソリトン方程式の可換側の記述を求めるため,Seiberg-Wittenマップを調べる予定であったが,2012年10月に児玉氏から思わぬコメントをいただいたため,Normal formの研究に切り替えて,詳しい計算を行った.2013年3月の児玉氏とNormal formに帰着する可能性について詳しく議論し,一筋縄ではないことが明らかになったが,これまでこの方向での研究は皆無であり,重要な知見であると思う. 国際会議で積極的に研究発表を行い,さまざまな研究者との交流が実現したという点でも大変有意義であった.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に基づき,平成24年度の研究を継続すると同時に,弦理論・可積分系への応用に力を注ぐ.まず,中津氏とのADHM構成法に関する共同研究をできるだけ早い段階で論文としてまとめ,秋の物理学会・数学会で成果発表を行う.ラグラジアン形式から出発した可積分系の再定式化, 分類の研究を継続し,古典可積分系と量子可積分系との関係を議論する. まずは可換空間の設定で,無限次元の対称性が明白になるような変数を用いてラグランジアンを再構成し, アノマリーの判定条件となる幾何学的障害を具体的に明らかにする. 次いで,平成24年度にほぼ手つかずとなったN=2弦理論への応用を詳しく議論する.非可換Anti-Self-Dual Yang-Mills(ASDYM)方程式を運動方程式に持つようなN=2弦理論の有効作用を具体的に記述し, 非可換ASDYM方程式の厳密解の具体的構成と弦理論的解釈および弦理論への応用を推し進める. 夏頃にドイツのハノーバー大学のLechtenfeld氏を訪問し,議論を行いたい. さらに昨年度行った非可換Normal formの研究も継続し,KdV方程式以外のものについても計算を行い,特徴や共通点を列挙することで,可換側との対応について何か知見を得たい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず成果発表のための旅費が必要である.2013年9月の高知大学での物理学会および愛媛大学での数学会で合計10万円の国内旅費が必要である.また夏頃にドイツへの海外旅費として2週間合計25万円が必要である.また,成果発表のためのコンピューターソフトウェアや資料収集のための周辺機器(ドキュメントスキャナ)を消耗品代として5万円ほど見積もっている.他に論文別刷代として5万円が必要である.
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Research Products
(12 results)