2011 Fiscal Year Research-status Report
センターボーテックス描像による強相関クォークグルーオンプラズマの研究
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23740194
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
斎藤 卓也 高知大学, 自然科学系, 助教 (50448023)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / 多国籍 / 物理学 |
Research Abstract |
研究計画の一年目にあたり、当初の予定通り赤外領域でのグルーオン伝播関数と色中心渦糸との関係を数値計算により調査した。グルーオン伝搬関数の計算に必要な相関関数やゲージ固定プログラムを、大阪大学にある共同利用施設である核物理研究センターのベクトル型並列計算機上で作成し、また、効果的な計算実行をするためのチューニング作業を行った。これらの準備段階を経て、実際の有限温度系における電場と磁場グルーオン伝搬関数をフーリエ変換した運動量空間において導出した。その結果、当初の予想通りに、渦糸構造は、ゼロ運動量付近でのグルーオンの運動に大きな影響を与えることが分かった。これは、非摂動論的な位相欠陥であるQCDの色渦糸が磁場質量生成メカニズムと密接な関係にあることを示している。相転移は電場自由度だけに影響を与え磁場自由度は依然としてプラズマ相においても特異性を持つ。これは、色渦糸が、有限温度系においても有効な自由度として存在し、より現象的には、磁場遮蔽となって現れることを示している。同時に、プラズマ相においても存在する空間方向の閉じ込め現象の存在を説明するものともなる。つまり、グリボフーツバンツィガー流のQCD閉じ込めシナリオがクォークグルーオンプラズマ相においても成立することも示唆している。本研究の結果によると、新しく発見されたプラズマ物質の強相関性は、磁場モードの赤外特異性から発生したものと理解される。その内容は、論文1や国際会議1で発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定の一年目の内容は、グルーオン伝搬関数の赤外モードでの様子を格子QCD計算により調査し、色中心渦との関係を見るということであった。ベクトル型計算機上でのプログラム作成から始まり、実際の数値計算により、当初予測されていたように、磁場モードの特異性は実際のグルーオンに大きな影響を与えていることを示した。これは、大きな研究テーマであるQGPの強く相関する原因であると考えている。その結果は、論文と国際会議発表となって出版された。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の成果を含め、当初の計画に沿って研究を進める予定である。2年目の研究計画はQGPの低粘性と非摂動論的な色中心渦との関係を格子QCD計算により明らかにすることである。輸送係数の計算をするためのベクトル計算機上でのプログラム作成を行い、そのプログラムを実行するための十分な計算時間を確保し、研究を進める。1年目の研究と比べて困難が予想される計算であるため十分な統計量を確保するように務める。研究成果は、学会や論文発表という形で公開される予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2年目はさらに計算量の多い困難な研究作業となることが予想される。そのために、データ蓄積用の専用計算機と記録用のハードディスクの購入を検討している。また、データの中継や新たな接続端末として、数台のノートパソコンの購入も予定している。また、本研究に関連した書籍も購入する予定である。共同研究者は国内や国外に居るので、必要に応じて研究打ち合わせの出張旅費としても利用する予定である。また、その研究成果発表を国内学会や国際会議で発表するための出張旅費として使用される。前年度の残額は、両年における研究において必要とされる統計データ量の見積もりに日数がかかり、実際の計算機選定が遅れたために生じた。そのため、繰越が必要であり、次年度では、繰越金額を合わせた全額執行の予定である。
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