2011 Fiscal Year Research-status Report
超対称な高次元非可換幾何とトポロジー的量子多体状態の研究
Project/Area Number |
23740212
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Research Institution | Kagawa National College of Technology |
Principal Investigator |
長谷部 一気 香川高等専門学校, 一般教育科, 講師 (60435469)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流(アメリカ) |
Research Abstract |
本年度に行い、論文として発表した内容は以下の3点である。1超対称な反強磁性スピン状態の隠れた秩序と励起の解析[PRB 84(2011)104426, 19pp](共著者:戸塚圭介氏)2高次元の超対称性を有する非可換球の具体的構成[NPB 853(2011)777-827](単著) 3非エルミートな量子力学系におけるトポロジー的相の研究[PRB 84(2011)205128, 19pp](共著者:江崎健太氏、佐藤昌利氏、甲元真人氏)である。1においては、低次元の量子多体状態である超対称な反強磁性スピン状態(超対称VBS状態)のトポロジー的性質について議論を行った。超対称VBS状態においては、通常の対称の破れによる秩序とは異なる量子的秩序(隠れた秩序)が存在してることを議論し、それを具体的に測る量としてのストリングオーダーパラメタ―を数値的手法により求めた。その結果、超対称VBS状態は通常のVBS状態の特徴をある極限で実現していることを確認し、さらに超対称の特有の効果を発現していることがわかった。超対称の特有の効果は、スピンのパリティの依らず有限の値をストリングパラメーターが有することに示されており。それは任意のスピンの大きさにおいて、系が超対称のためにトポロジー的状態になっていることを意味している。また、超対称なVBS状態の上の特徴的な励起のエネルギーについても単一モード近似の範囲内で数値的に求めた。2においては、高次元の超対称なリー群、特にOSP群を用いて、超対称を有する高次元の非可換球の構成を行った。その古典的極限として、副次的に超対称な高次元のホップ写像を与えることにも成功した。3において、非エルミートな量子力学系におけるトポロジー的状態の実現について、具体的模型を構成し数値的手法を用いて議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先に述べたように本年度に行い、論文として発表した内容は以下の3点である。(1)超対称な反強磁性スピン状態の隠れた秩序と励起の解析[PRB 84(2011)104426, 19pp](共著者:戸塚圭介氏)(2)高次元の超対称性を有する非可換球の具体的構成[NPB 853(2011)777-827](単著) (3)非エルミートな量子力学系におけるトポロジー的相の研究[PRB 84(2011)205128, 19pp](共著者:江崎健太氏、佐藤昌利氏、甲元真人氏)である。(3)に関連した内容として、もう一編論文があるがそれは現在査読中である。本年度の計画として交付申請書には(1)低次元におけるトポロジー的量子多体状態の隠れた秩序、励起の解析 (2)高次元における超対称な非可換多様体の数理の確立 (3)行列理論での実現、超対称な場の理論の導出 を主な目標として挙げたが、その(1)と(2)については本年度行った上記の結果(1)、(2)で遂行することが出来た。行列積表示と数値的手法を用いて低次元の量子トポロジー的状態の解析を行い(1)、高次元の超対称リー代数を用いることで高次元の超対称な非可換球の構成に成功した(2)。課題(3)については、(2)で部分的に議論を行ったが、具体的に場の理論を構成するまでには至らなかった。これは、数学的な手続きが煩雑であるため、来年度以降の課題である。一方、(3)であげたように、トポロジー的量子状態を非エルミートな場合に拡張した研究も発展させることが出来、トポロジー的状態について当初より拡張した研究が出来た。一部分達成できなかった箇所もあるが、当初の課題を大部分達成することができた。今年度は、ほぼ順調に研究を進めることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はほぼ順調に研究を遂行することができた。よって、今後の研究は当初の予定のように イ.非可換幾何を応用した高い対称性を有するトポロジー的量子多体状態の構成、ロ.その性質の解析 を行う。また、ハ.非コンパクトな非可換幾何と双曲幾何の研究も推進することを計画している。今年度の成果(2)において発展させた高次元の超対称な非可換球を構成する際に用いたシュインガ―演算子の手法を応用して、イにおいて、高次元の量子多体状態を構成することを考えている。また、ロについては、(1)で行った解析を踏襲し高次元の場合の解析を行う予定である。特に近年、量子多体状態を規定する量として、エンタングルメントエントロピーまたはエンタングルメントスペクトルが注目されている。今回の研究おいても、それらの量を数値的手法を用いて導出し、その性質について議論を行う予定である。また、ハ.は今年度思いがけず発展した(3)を更に発展させる研究に相当している。非エルミートな行列の生成子を有する群は不定計量の群であり、双曲幾何の対称性はそのような不定計量の直交群で与えられる。これまでの非可換球の解析においてはコンパクトな群しか用いられないが、それを不定計量に拡張することで、これまでの研究の包括的理解が出来るはずである。また、その不定計量の群を用いてることによって、高次元の非可換双曲体の具体的構成、非エルミートな量子多体状態の理解が進むことが期待される。以上、今後はこれまでの研究を自然に発展させる方向での研究を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
使用計画は以下の通り。1.本研究において数値計算、論文作成のためのソフトが必要である。また、論文取り寄せ、書籍の購入が必要である。更に、論文査読、掲載のため出版社に支払うための費用が必要である。(計:16万円)2.国内外への研究成果発表、また協力研究者との議論のための旅費が必要である。(計:40万円)
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Research Products
(8 results)