2011 Fiscal Year Research-status Report
放射性トレーサー法とナノ空間解析による固体高分子電解質中の電解質塩ナノ偏析の研究
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23740234
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
佐藤 公法 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00401448)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 高分子電解質 / ナノ偏析 / ナノ空間 / ポジトロニウム / トレーサー |
Research Abstract |
本研究課題では,固体高分子電解質中において,どのようにしてカチオンとアニオンが結合して中性イオン対が生成し,ナノ偏析現象に発展していくのかを解明することを目的とする。固体高分子電解質試料の作成,固体高分子電解質中のナノ空間解析,インピーダンス測定による伝導度測定,トレーサー拡散実験が推進事項の柱である。今年の具体的な研究実施内容は,次の通りである。1. 固体高分子電解質試料の作製,2. ポジトロニウムを用いたナノ空間分析手法の整備,先ず,1 の高分子電解質の作製において,ポリエチレンオキサイド(PEO)高分子をホスト高分子とし,電解質塩としてのカチオンとアニオンの組み合わせとしてナトリウムNa+ とヨウ素I- を採用した。PEO 系高分子の割合x を20 から1000 まで変化させ,これらの複合体(PEOx-mI)を作製した。2 のナノ空間分析手法の整備において,ナノ空間サイズを評価するデジタルオシロスコープベース高分解能寿命計測システム,ナノ空間近傍元素を評価する陽電子寿命-運動量相関計測システムを整備した。伝導度計測システムの整備は,インピーダンスアナライザーを用いたシステムを現在立ち上げ中である。多くの高分子材料中のナノ空間評価を行っただけでなく,イオン伝導を視野に入れ酸素,水分子など軽元素の拡散挙動を調べることに成功した。また,PEO 系高分子の割合x を変化させた複合体について,ナノ空間サイズに有意な変化を検出することに成功した。得られた結果は,現在さらに詳細に検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,固体高分子電解質試料の作成は順調に進んだ。これに加えて,次年度推進予定だったポジトロニウムを用いたナノ空間解析システム,分析手法の整備も飛躍的に進んだ。しかしながら,今年度計画していたトレーサー拡散実験が次年度開始することになった。以上より,現在までの達成度はおおむね順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は推進方策として,先ずはトレーサー拡散試験に着手する。平行して,インピーダンスアナライザーを用いたイオン伝導度システムの整備を行う。得られた拡散データ,ナノ空間データ,イオン伝導度データに基づき,中性イオン対生成の起源,ナノ偏析メカニズムを議論する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度,ナノ空間解析の一貫として磁性元素を導入した高分子材料の磁化率計測も予定していたが,研究進展上そこまで至らなかった。今年度予算として計上する。これに加えて,消耗品,旅費として使用する計画である。
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