2012 Fiscal Year Annual Research Report
放射性トレーサー法とナノ空間解析による固体高分子電解質中の電解質塩ナノ偏析の研究
Project/Area Number |
23740234
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
佐藤 公法 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00401448)
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Keywords | 固体高分子電解質 / ナノ偏析 / ナノ空間 |
Research Abstract |
本研究課題では,固体高分子電解質中において,どのようにしてカチオンとアニオンが結合して中性イオン対が生成し,ナノ偏析現象に発展していくのかを解明することを目的とする。平成23年度は,ポリエチレンオキサイド(PEO)高分子をホスト高分子,ナトリウムNa+ とヨウ素I-をカチオンとアニオンの組み合わせとした電解質塩を有する固体高分子電解質を作製した。PEO 系高分子の割合x を20 から1000 まで変化させ,これらの複合体(PEOx-mI)を作製した。加えて,ナノ空間サイズを評価するデジタルオシロスコープベース高分解能ポジトロニウム寿命計測システム,ナノ空間近傍元素を評価する陽電子寿命-運動量相関(AMOC)計測システムを整備した。平成24年度は,初年度整備したインピーダンスアナライザーシステム,ポジトロニウム寿命計測システム, AMOC計測システムにより,イオン液体を用いた固体高分子電解質に焦点を当てた。PEO高分子をホスト高分子,triflateと1-ethyl-3-methyl imazodaliumをアニオンとカチオンの組み合わせとした試料を作成した。インピーダンス測定,拡散実験のデータにより,およそ160度でナノ偏析現象が開始することが分かった。ポジトロニウム寿命計測により,ナノ空間変化を調べたところ,インピーダンス測定と拡散実験で確認された温度160度で,サイズ,量ともに減少する傾向を示した。これらのことは,カチオンとアニオンが結合した中性イオン対が,ナノ空間に局在していることを意味している。さらに,AMOC計測によりナノ空間近傍の元素分析を行ったところ,160度よりも遙かに低温で,近傍元素が有意に変化した。これは,ナノ偏析現象の前駆現象であることが示唆される。
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