2012 Fiscal Year Annual Research Report
鉄ニクタイド超伝導体におけるディラックコーンへの不純物置換効果
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23740251
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田邉 洋一 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80574649)
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Keywords | 鉄ニクタイド超伝導体 / ディラックコーン / 不純物置換効果 / 磁気抵抗効果 / ホール効果 / 後方散乱の消失 / 近藤効果 |
Research Abstract |
本研究では、鉄ニクタイド超伝導体のディラックコーンへの非磁性・磁性不純物置換効果を明らかにすることを目的とした。この系の代表的な母物質であるBa(FeAS)2を用いて、Feサイトにこの系において非磁性不純物のRuと磁性不純物のMnをそれぞれ置換した単結晶を育成し、磁場中輸送特性の測定を行った。 Ru置換においては、磁気相転移温度以下で、ディラックコーンの量子極限として理解出来る線形な磁気抵抗効果を観測した。この結果は、非磁性不純物に対してディラックコーンが安定であることを示している。さらに、有効質量がキャリア数の0.5乗に比例して増大するディラックコーン型の線形分散に特徴的な振る舞いを観測し、平均自由行程がRu濃度に対して一定であり、Ru-Ru間距離よりも長いことを明らかにした。この結果は、Ruによる電子の後方散乱がベリー位相の効果によって抑制されていることを示している。(Y.Tanabe et al., PRB (2012).) Mn置換においても、15K以上の温度領域で線形な磁気抵抗効果を観測した。さらに、有効質量がキャリア数の0.5乗に比例して増大する振る舞いを観測し、その傾きがRu置換の場合と一致することを見出した。この結果はBa(FeAs)2において観測されてディラックコーンが非磁性・磁性不純物に対して安定であることを示している。一方、15K以下においては、線形な磁気抵抗効果が出現するオンセット磁場が異常に増大することを観測した。2Kにおけるディラック電子の有効質量を計算した結果、15K以上と場合と比較して15倍程度重くなっていることが明らかになった。この結果は、ディラック電子とMnの局在電子スピンによる近藤効果によるバンドの繰り込み効果によってディラック電子の有効質量が増大していることを示している。(T. Urata et al., submitted)
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Research Products
(6 results)