2012 Fiscal Year Research-status Report
グリーン関数法を用いた励起状態の高精度かつ大規模全電子第一原理計算手法の開発
Project/Area Number |
23740288
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野口 良史 東京大学, 物性研究所, 助教 (60450293)
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Keywords | 全電子混合基底法 / 第一原理計算 / GW近似 / Bethe-Salpeter法 / 光励起 |
Research Abstract |
研究計画書に従い今年度は全電子GW+Bethe-Salpeter法をより大規模系に適応できるようにするため、全電子混合基底法プログラムの並列化・高速化に取り組んだ。本計算手法でその出発点となる通常のLDAは超大規模並列が難しいために、いくつかの高速化アルゴリズムを導入した。具体的には計算量がN^3に比例する波動関数の直交化部分(Gramm-Schmidt法)にはBlas level3を多用することで高速に実行することができるrecursive blocking Gramm-Schmidt法を導入した。また電荷密度混合法にresidual minimization method in the direct inversion of iterative subspace法(RMM-DIIS法)を導入することでself-consistent loopの回数自体を減らすことにも成功した。そのRMM-DIIS法を固有値問題にも適応し計算量が多いGramm-Schmidtの回数を減らすことにも成功した。以上の高速化アルゴリズムの導入により、高速にLDA計算を行うことができるようになった。またGW+Bethe-Salpeter部分ではその計算の特性上、超大規模並列計算に向いていることからプログラム全体のMPI並列化に取り組んだ。またFFTを多用するために、FFTによる通信を避ける必要がある。そのために1つのFFT計算はノード内に納めるようにプログラムを設計・開発を行った。1538CPUコアまでを用いたベンチマークテストの結果は良好であり、日常的に使用することのできるスーパーコンピュータ資源でも100原子程度のシステムを取り扱うことができるようになった。 本年度はこのプログラムをアルカリ金属内包フラーレンに適応し、その光学特性を計算した。その結果は近く論文に投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は全電子GW+Bethe-Salpeterプログラムの並列化と並列計算が難しいLDA部分にはいくつかの高速化アルゴリズムを導入した。これらのプログラム開発は計画通り進み、無事に開発は終了した。また実際にいくつかのベンチマークテストを行い、並列効率(strong scalingとweak scaling)を測定した。特にweak scaling測定では1538MPI並列実行時においても並列効率97%程度を実現することができたことからも、日常的に使用するスーパーコンピュータ資源をフルに活用できるまでにプログラム開発が行われたことを確認することができた。 今年度は、このプログラムを使用してソーラーセルなどへの応用が期待されているアルカリ金属内包フラーレンの光吸収スペクトルを計算し、その光学特性を詳細に議論した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに超大規模並列計算が可能な全電子GW+Bethe-Salpeterプログラムを開発してきた。その結果、100原子程度のシステムを取り扱うことができるようになった。しかしGW+Bethe-Salpeter法は依然として密度汎関数理論に基づいた通常の第一原理計算手法に比べるとその計算コストは遙かに高い。その一つの要因はGW+Bethe-Salpeter法では数千に及ぶ非占有軌道の情報が必要になることがあげられる。数千もの固有値、固有状態を生成する作業に多くの計算時間がかかってしまう。そこで今後はこの大量に必要となる非占有軌道を近似的に扱うことにより、計算制度を維持しつつ計算時間を劇的に減らすことのできる新たな計算手法(Phys. Rev. B_87 165124 (2013))を導入するつもりである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本計算手法は非常に重い計算であるために、その実行にはスーパーコンピュータが必要になる。そのためスーパーコンピュータ使用料(1年分)として40万円が必要である。また近年の研究動向を調査する目的で国内外の学会・研究会などに参加する費用として20万円が必要である。
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